農学部研究紹介2020-2021
19/44

15組織培養や生化学実験を通して、実験動物の取り扱いやバイオテクノロジーに必要な技術が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は製薬会社、食品会社、不妊治療を専門とする産婦人科の胚培養士として活躍出来る人材になります。生殖細胞を用いて生命現象に切り込むアニマルバイオテクノロジー動物生殖学研究室では、マウスをはじめブタやウシなどの哺乳動物の卵子や精子、性ホルモンなど生殖や繁殖に関する研究を行っています。特に、精子のもとになる精原幹細胞(SpermatogonialStem Cell)の様に多能性・多分化能を維持した細胞に関心があり、これらの細胞を用いた基礎研究や応用研究を進めています。また、精子の低温・常温保存技術および卵子のガラス化保存ならびに非凍結低温保存技術の開発も行っています。これら生殖に関する生命現象を解明し、動物生産やヒトの不妊医療への応用を目指しています。ブタ精子の運動性を評価するために、高輝度LEDと超高速ビデオカメラを用いて、精子鞭毛の動きを解析するシステムを開発した。また、同システムを利用しながら精子の保存条件を種々検討している幼若ブタ精巣の精細管組織の画像。精細管の中で精子が形成される。精原細胞特異抗体により精原細胞のみを染色することが可能だ精巣細胞を酵素でバラバラに解離すると様々な細胞が得られる。ブタ精原細胞特異抗体で染色すると、生きた精原細胞を蛍光色素で染めることが可能である。FACS分取装置で分離が可能で、精原細胞のみを単離できる。この細胞だけを培養して精子を形成させる研究を進めている動物生殖学研究室では、生殖細胞をとおして生命現象を解明する基礎研究を行っています。また、得られた知見を応用することにより、人類の発展に寄与することを目指しています。精原幹細胞を、幹細胞の能力を維持しながら自由に増やすことが出来れば、体外での精子形成や、精原幹細胞の精細管への移植により生体での精子生産が可能となり、遺伝子改変など生殖細胞の人為操作がより容易なものになるものと思われます。さらに、ヒト男性不妊の新たな治療法の開発にも貢献できます。精子をはじめ生殖細胞の保存に関する研究の進展により、常温保存など全く新たな保存方法への応用が期待されます。動物生殖学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像高木優二准教授1990年信州大学農学部助手を経て、1999年より現職。この間、山梨県酪農試験場客員研究員を併任。専門は動物生殖学。哺乳動物の受精卵の美しさに魅了され研究の世界へ。近年は精巣を中心に研究を行っている。動物資源生命科学コース当研究室では、骨格筋幹細胞を用い、筋肉が再生する仕組みを研究します。また、幹細胞を活性化する分子を探索し、筋肉の健康を保ち、超高齢社会の克服に役立つ食品や医薬品の開発も目指します。私たちが発見した、筋肉の分化を誘導する分子は、癌の抑制や再生医療への応用展開も期待されています。筋肉はまた、食肉としても私たちに身近な存在です。筋肉の研究は、畜産動物による食肉の生産とも深く関係しています。私たちは、マウスやヒトの研究で得られた成果をニワトリなどの家禽にも適用していきます。研究から広がる未来最新の分子細胞生物学の知識や技術を学ぶとともに、研究テーマに関連する医学・生物学を勉強することで、広い視野から問題を解決する能力を養います。将来は各分野で研究・技術職での活躍が期待されます。卒業後の未来像筋肉の機能低下を予防し、健康⾧寿社会の実現を高谷智英助教博士(医学)。ミネソタ大学研究員を経て、2015年より現職。「動く細胞」である筋肉に魅かれて、骨格筋や心臓の疾患・再生の研究を行ってきた。専門は幹細胞生物学。医農連携の新しい研究を開拓していきたい。分子細胞機能学研究室健康で活動的な生活を送るには全身の筋肉の働きが不可欠です。日本は長寿国家ですが、平均寿命と、自立した生活を送れる「健康寿命」の間には、約10年の差があります。心臓病・動脈硬化・寝たきりといった筋肉の病気を予防することが健康長寿社会の実現には必要です。私たちの研究室では、幹細胞生物学の智識と技術を駆使し、病気の背景にある生命原理の解明に挑んでいます。さらに、筋疾患の予防や治療に有用な食品・医薬品の創製を目指し、生物学・農学・医学・薬学の領域にまたがるユニークな研究活動を展開しています。(http://t-takaya.net/)マウス骨格筋幹細胞(0日目)から筋肉細胞(4日目)への分化を捉えた顕微鏡写真。細胞のダイナミックな変化は幹細胞研究の大きな魅力であり、醍醐味です。骨格筋幹細胞を活性化する新規分子の一例ミオシン/核0日目2日目4日目明視野動物資源生命科学コース

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る