SHINSHU UNIVERSITY SOCIAL RESPONSIBILITY REPORT 2018-2019
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SHINSHU UNIVERSITY SOCIAL RESPONSIBILITYREPORT 2018−20199信州の山々に囲まれた、清涼で緑豊かな、じっくりと物事を考えることのできる環境を活用し、独創性豊かな人材を育成します。また、環境保全・環境共生等に関する研究を推進し、それをもとに環境マインドを持った人材育成を系統的に行います。信州大学では、環境に関する授業科目の整備や海外研修、環境マネジメントシステムの推進などを通じて、環境マインドを持った人材を育成しています。環境教育海外研修は、環境に対する取り組みについて多様な視点で捉え実践する目的で2009年から実施しており、2018年までに43名の学生が、海外に出て環境課題を学修しています。2018年は4名の学生がニュージーランドを訪れ、稀少な動植物や自然環境の保全を行っている国立公園、再生可能エネルギー関連施設などを視察しました。また、帰国後には研修で得た成果について広く学生に還元する目的で学内報告会も実施しています。環境マインドを持つ人材の育成遠藤守信特別特任教授(中央)からナノカーボン複合膜の説明を受けるベトナムホーチミン市訪問団北九州パイロット試験設備実証試験装置が2019年3月に完成し、5月23日に関係者による看板上掲式を行いました。現在、信州大学で開発したナノカーボン複合膜のモジュールを使用し実証試験を行っていますCOIで開発した物質分離膜(ナノカーボン複合膜)を製造するための大型製膜装置地球上のすべての水のうち、人間が使いやすい地表水はわずか0.01%ほどです。アクア・イノベーション拠点は2013年、「世界中の誰もが十分な水を手に入れられる社会」の実現を目指し、9年間の国家プロジェクトとしてスタートしました。多様な水源から“使える水”を造り、循環させる「革新的な造水・水循環システム」を構築するため、信州大学が得意とするナノカーボン材料技術を活かし、オールジャパン体制の産学官連携のもと、脱塩性、透水性、ロバスト(頑強)性を飛躍的に向上させた分離膜『ナノカーボン複合膜』を開発。水処理の低コスト化、省エネ化を目指して、実用化に向けた実証の段階に入りました。1-1世界の水環境の改善に貢献-前進を続けるアクア・イノベーション拠点(COI)ベトナム社会主義共和国ホーチミン市の市長に当たるグエン・タン・フォン人民委員会委員長をはじめとする訪問団が2018年4月に長野市のアクア・イノベーション拠点を視察しました。ホーチミン市の都市圏人口は1,000万人を超え、一日当たりの水の使用量は110万トン。水源として川のほかに海の水も淡水化して利用していますが、コストがかかるため普及が進んでいません。同拠点で新たに開発した頑強で汚れがつきにくい『ナノカーボン複合膜』は、既存の膜より大幅なコストダウンが見込めるという遠藤守信特別特任教授の話に、訪問団からはどよめきが起き、同拠点の造水技術への期待と関心をうかがわせました。1-2ベトナム ホーチミン市訪問団にCOI拠点の造水技術を紹介2環境マインドを持つ人材の育成アクア・イノベーション拠点が新たに開発した『ナノカーボン複合膜』の性能を実証する試験設備が、2019年5月、北九州市小倉のウォータープラザ北九州に完成しました。長さ12メートルほどのコンテナ内に、ナノカーボン膜モジュールを評価する海水淡水化設備を設置。実海水を処理し、脱塩性や耐汚濁性、耐薬品性など、『ナノカーボン複合膜』の性能や運用コストを検証します。高分子の膜にカーボンナノチューブを混ぜたナノカーボン膜は丈夫で汚れがつきにくいため、膜洗浄のための薬品費や膜交換費など、従来の海水淡水化システムに比べて造水コストを1/3程度削減できると見込んでいます。今後、約3年間の実証試験を通して、『ナノカーボン複合膜』の実用化と『革新的な造水・水循環システム』の社会実装へとつなげます。1-3海水淡水化パイロット試験設備が完成し『革新的な造水・水循環システム』の社会実装へ加速

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