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07土壌や河川を汚染した石油系オイルの除去には、吸着パットを使った方法や、微生物の散布による分解といった方法が知られています。しかし吸着パットによる除去は、手間がかかる上、廃棄コストも大きいことが課題でした。一方、微生物を散布するだけでは、油が完全に分解・浄化されるまでに1~2か月間かかることもあり、長期間、汚染の影響が続いてしまいます。また微生物の働きを活性化させる物質を与えなければ、思ったような効果が期待できないこともあります。これらに対して、クロロフィルを用いる方法ならば、流出した油をたった数時間で分解・浄化することができます。「クロロフィルとは、植物や藻などに含まれる緑色の色素のこと。天然物を用いた技術ですから、環境負荷も少なく、従来の方法に比べ、各段に短い期間で浄化が可能です」(伊原准教授)やり方はとても簡単。油分を除去したい場所にクロロフィルを散布し、太陽光などの光を照射するだけです。光が届く場所であれば、水中や路面上など、さまざまな環境下で効果が確認されています。油による土壌などの汚染は浄化するのがとても大変その仕組みはいたってシンプル。クロロフィルは光が当たることで活性酸素を発生させる性質があります。この活性酸素の作用で油が酸化し、分子構造が変わります。すると自然界にいる微生物に分解されやすくなります。そのため、従来の方法に比べ短時間での浄化が可能となるのです。さらに伊原准教授は、精製品のクロロフィルではなく、粗く抽出したクロロフィルでも有効であることを実証しました。先述した通り、クロロフィルは藻類や植物などから抽出できるため、資源量は豊富です。実用化間近の画期的な特許技術であるといえます。信大特許信州TLO映像制作コラボ信大動画チャンネルで配信中!・ 信州大学のホームページから!本コンテンツは2月下旬より公開Vol.5Patent of Shinshu University土壌や河川を汚染した石油系オイルの除去は、非常に大変な作業です。工場などから重油が漏れ海や河川が汚染されるケースがまず想定されますが、そのほか、新潟市など、かつて石油の産出地域として知られた地域では、今でも重油が自然に土壌に染み出できてしまうこともあります。石油系オイルの除去には、吸着パット(吸着剤)や微生物を用いた方法などがありますが、今回ご紹介するのは、植物に含まれるクロロフィルを使った新手法。信州大学の伊原正喜学術研究院(農学系)准教授の研究によりその有効性が確かめられました。環境にもやさしい新技術として期待がかかっています。土壌や河川を汚染した石油系オイルの除去は、非常に大変な作業です。工場などから重油が漏れ海や河川が汚染されるケースがまず想定されますが、そのほか、新潟市など、かつて石油の産出地域として知られた地域では、今でも重油が自然に土壌に染み出できてしまうこともあります。石油系オイルの除去には、吸着パット(吸着剤)や微生物を用いた方法などがありますが、今回ご紹介するのは、植物に含まれるクロロフィルを使った新手法。信州大学の伊原正喜学術研究院(農学系)准教授の研究によりその有効性が確かめられました。環境にもやさしい新技術として期待が寄せられています。(文・柳澤 愛由)油による土壌などの汚染クロロフィルで油を活性酸素で油が微生物のご特許特集⑤クロロフィルを用いた油分解処理方法クロロフィルにより活性酸素が発生し、油が酸化されていく

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