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15人と組織を「面」でつなぐ産学連携へ本号で特集されている第6回信州大学見本市を訪れた。信大らしい非常にバラエティに富む研究がところ狭しと展示されており、直接研究者に疑問や質問をぶつけることができる良い機会だった。「青竹踏みによる神経刺激でのアンチエイジング」や「初心者用吹奏楽練習支援アプリ」などは、文字を見ただけですでに面白そうで、思わず足を止めてじっくりと見入ってしまった。それ以外にも、本項で以前取り上げた「信大クリスタル」や繊維学部の「クモの糸の可能性」など、オリジナリティーあふれる展示が多数紹介されていた。今回初めて来場したという企業の方に話を聞いた。長野県内の素材系中規模企業で、社員に信大出身者は1人もいないという。「地元の信大ですらどんな研究をしているか正直知らなかったし、これまであまり関心を持っていなかった」とのこと。しかし見本市の展示を見て、その考えは大きく変わったそうだ。「こんな近くにキラリと光る研究が多数あるんだと感心した。まずは小さくてもいいから研究やディスカッションを一緒に取り組んでみたい」とかなり強い思いを持った様子だった。池澤あやかさんと信大若手研究者のトークセッションでも指摘があったが、成果が出るまでのタイムスパンの違いなど、企業側から見た産学連携はまだハードルが高い印象があるのは否めない。2030年のSDGs達成に向けて大学セクターの役割はこれまで以上に重視される傾向にあるが、どうやって課題を越えていくべきだろうか。7月に公開された「大学ファクトブック」という資料にヒントがある。文部科学省と経済産業省、経団連が昨年から発行しているもので、共同研究の件数や連携窓口の連絡先、特許の出願件数、取り組み事例などをファクトブックで『見える化』している。大学側が組織や財務状況を積極的に発信することで、企業が大学に対する理解を深め、連携にあたって比較や検討をしやすくする狙いがあるという。今年度版には全国442大学の情報がまとまっており、もちろん信大も掲載されている。これまで個人間のつながりから始まることが多かった産学連携を、「組織」対「組織」という「面」でとらえるきっかけにつながる良い取り組みだと思う。70年にわたる産学連携の歴史を持つ信大では、連携のハブとなるSUIRLO(サイロ=学術研究・産学官連携推進機構)も積極的に情報発信しており、地域と連携したものづくり支援やベンチャー育成も強い。大学が研究と人材を地元企業に提供・還元し、持続可能な社会をともにつくっていくこと、これこそがSDGsの理念に合致する活動だと考える。立ち見が出るほど盛況だった「池澤あやかさんと信大若手研究トークセッション」産学連携の歴史展示パネルに見入る来場者信州大学は学外の広報有識者に広報アドバイザーとして、広報活動への助言・指導など、多彩な協力をいただいています。 ⑩2002年朝日新聞社入社。広告局の外部営業、報道局記者、コンテンツプロデュース部などを経て、2015年中東に留学。2018年よりソリューション・デザイン部。朝日新聞社ソリューション・デザイン部信州大学広報スタッフ会議広報アドバイザー氏川﨑 紀夫
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