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11池澤あやかさん(以下、敬称略) さて本日のトークセッション、一つ目のテーマについてお聞きします。まずは皆さんの研究に対する「強み・悩み」の部分はいかがでしょうか?増木静江教授(以下、職名略) 研究の悩みと楽しみは表裏一体ですね。自分が最高だと思った研究論文を投稿して、レフェリーからコテンパンにやられる、というか、戻ってくるケースでは、自分のすべてを否定されてしまったような気がします(笑)。池澤 う~ん、それはちょっと辛いですね。論文をリジェクトされることって、よくあるんですか?増木 そうですね。私の場合、今、日の目を見ているのは投稿した2割程度です(笑)。池澤 苦労して生み出される論文だからこそアクセプトされたときには、喜びも大きいですよね。次はお二人が今メインにされている研究課題に出会ったきっかけをお伺いしましょうか。宮川みなみ助教(以下、職名略) 私の研究分野は最適化手法の「進化計算」です。学部の頃に指導教員から教わり、工学の分野なのに、自然界の生物の仕組みを使っている点がおもしろいなと思い、とても興味を持ちました。池澤 その研究を学部の頃から今まで続けられている魅力は何だと思いますか?宮川 研究で実際に計算中の「解」をプロットしていくと、どんどん「解」が“進化”していくのが見えるんです。その動きを自分で設計して、思い通りに動いていくと、とても楽しいですし、形にできた、という喜びがありますね。池澤 人が設計したものが進化して、その結果が実際世の中の製品にアウトプットできる、っていうのは面白いですね。この分野、(産学連携の)強みですね。宮川 私の研究は「進化計算」の中でも"制約"の扱いに注目したものです。例えば"軽い車"を設計するとしたら、安全性とか性能、コスト等の必ず満たさなければならない制約が出てきます。その制約のもとで、最適な「解」をいかに効率よく導き出すかというものです。池澤 面白い研究ですね。市場に出回る製品もより「進化」しそうですね。増木先生の研究においてはいかがですか?増木 私の研究は「インターバル速歩」です。社会問題解決型の研究で、高齢化に伴い増え続け、国の財政を圧迫している医療費の問題をどうしたら削減できるか、病気を予防するにはどうしたらよいのかを考えたところから始まりました。よく「1日1万歩歩く」ことが健康に良いと言われていますので、実際に試しましたが、体力は上がらず、個人個人の体力を測定し、その体力に基づいた強度で運動することが大切だとわかりました。健康維持をフィールドで手軽に、継続して行なってもらうにはどうしたらいいか…企業の方にもご協力いただき、現在はスマートフォンのアプリを開発しながら研究を進めています。仮説を立て、実際に検証結果が出て、健康面に改善が見られた時には、これこそスポーツ医科学の面白さだなと感じました。池澤 医療費の削減など私たちにとっても身近な問題ですが、それをスマートフォンなどで手軽に始められるのは解決の糸口になりそうですね。研究活動で「仮説を立てたけど失敗!」なんてのはありましたか?増木 日々あります!!(笑)。でも、その失敗も次につながるステップになることがよくあります。宮川 私はまだ基礎研究の段階なので、結果が予想外の動きを示したことは少ないのですが、産学連携で生まれた製品が実際に使われることで、人の生活が便利になり、社会に貢献できればいいなと思います。池澤 企業との共同研究になると環境も対象も変化するので検証が難しい面もありますが、レスポンスがある点ではやりがいがありますね。増木 そうですね。最終的に研究の成果が人の役に立つことがすごく大事だと思います。池澤 今後の研究について何か他に考えていることはありますか?宮川 制約付き最適化問題のための「進化計算」の研究で今後も継続して成果を出し、"制約付きといえば宮川”といわれるような研究者になりたいと思っています(笑)。増木 私の場合は、健康維持は歩いた数ではなく、“運動強度が大事”という概念を、常識にできたらいいなと思っています。私たちの開発したスマートフォンアプリで、誰でも簡単に、個人の目標レベルの強度を把握しながら楽しく運動できるよう、「インターバル速歩」を核にした新しい予防医学を確立できたらと思います。若手研究者の強み、弱み、そして企みとは第6回信州大学 信州大学工学部 電子情報システム工学科宮川 みなみ 助教2016年電気通信大学大学院情報理工学研究科修了2019年信州大学学術研究院(工学系)助教 第6回の信州大学見本市は、大学創立70周年と題したトークセッションを実施。約1時間のステかさん、信州大学の若手女性研究者であるバイ子情報システム工学科の宮川みなみ助教の3名いを語りました。 (※3名の皆さんがそれぞれの研究内容を紹介し産学連携で生まれた製品が実際に使われることで、人の生活が便利になり、社会に貢献できればいいなと思います。(宮川)タレント兼エンジニアNHK Eテレ趣味どきっ!のスマホ講師も務める池澤あや信大若手研究者の一つ目のトークテーマ
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