now118_web
9/20
08世界有数の高い目標を掲げるニュージーランドニュージーランドは、国鳥にもなっている 飛べない鳥キーウィをはじめ貴重な固有種が多く生息する自然豊かな島国です。先住民族マオリの文化を背景に、自然を大切にする国民性が根付いています。今回の研修におけるトピックは主に2つありました。1つ目は、自然環境の保全。独特の生物相を有するニュージーランドですが、島嶼環境は外部からのインパクトに弱く、人為的に持ち込まれた外来種が生態系に大きな影響を与えてきました。そのため現在ニュージーランドでは、希少種の保護や自然環境の保全を目的とした様々な取り組みが行われています。とくに、ネズミなど外来哺乳類の駆除に力を入れており、2050年までに外来哺乳類の根絶を目指すという意欲的な目標を掲げています。2つ目のトピックは、再生可能エネルギーの利用です。ニュージーランドは、水力や地熱などによる発電量が約80%を占め、現状すでに世界有数の再エネ利用率ですが、さらに2025年には90%にする、という高い目標を掲げています。これは世界的に見ても類をみない前向きな姿勢です。とくに地熱利用も盛んで、今後のさらなる伸びも期待され、国を挙げて先進的な研究や取組が進められています。このように環境政策に国として非常に高い目標を掲げ、分かりやすく提示していることが目を引きます。学生たちには、このようなニュージーランドの環境政策の特色を学び、課題も同時に感じてもらいながら、日本との違いや活かせる点について考えて欲しいと思い、視察先を検討しました。ニュージーランド環境保全省DOC (Department of Conservation) や、経済産業省(Ministry of Business innovation & employment)では環境政策についての概要を、次いで訪問したヴィクトリア大学では、保全生態学を専門とするニコラ・ネルソン准教授からニュージーランドの生態系の特徴や具体的な外来種対策について教えていただきました。民間の自然保護区であるジーランディア(Zealandia)では、周囲をすべて特注の柵で囲い、外来種を徹底的に排除した上で希少種が生息・生育できるように管理している様子、入場料や寄付金などによる運営の仕組みを学びました。タウポにある地熱利用の総合的な研究機関であるGNSサイエンス研究所では、地熱探査から地球物理学、火山学など多面的な分野の研究内容を紹介いただき、学際的なアプローチの重要性と、「何のために研究成果をどう活かすか」が非常に明確なことに感銘を受けました。世界遺産でもあるトンガリロ国立公園では、現地のレンジャーが行う外来種対策の罠の巡回調査に同行させてもらい、現場の空気を肌で感じる貴重な機会となりました。ニュージーランドの国土面積は日本と比較すると約3/4ですが、人口が約495万人(2019年3月)と少なく、人口密度が低いことも特徴です。日本と同じ島国で火山帯に属するなどの共通点もある一方で、歴史や国土利用のあり方は大きく異なっているともいえます。学生たちには、日本と異なる環境下で感じたことを大切にし、ここからさらなる興味・関心を深めてもらいたいと思います。全学教育機構 准教授 加藤 麻理子引率教員【研修の狙いを引率教員に聞きました!】研修先概要
元のページ
../index.html#9