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ealand10ニュージーランドでは、電力の多くを再生可能エネルギーでまかなっています。しかし、再生可能エネルギーも開発時に環境負荷がかかることがあります。今回の研修では、そうしたマイナスの側面も含め、ニュージーランドにおける再生可能エネルギーの在り方や特色ある環境保護・保全活動の成果について学びたいと考えました。ニュージーランドにおける発電量のうち、最も高い割合を占めているのが水力発電です。しかし現状、適地とされる河川をほぼ全て開発しつくしてしまっている状態で、さらなる拡大は見込めません。そこで期待を寄せられているのが地熱発電であり、研究開発が盛んに行われています。地熱研究所GNSサイエンスでは、多彩な研究が行われており、それぞれの研究を統合して、さらなる開発に役立てている様子を知ることができました。GNSサイエンスの役割は調査研究だけではありません。地熱発電事業に参入したいという企業に対し、調査結果などを開示したり相談を受けたりすることで、開発を手助けすることもあるそうです。実際に地熱発電を行っているワイラケイ発電所も見学しました。以前は発電に使った地熱水をそのまま河川に流したことによる河川の温度上昇や、地下開発による地盤沈下などの公害が起こったこともあったそうです。現在は地熱水の95%を還元井に戻しており、地下の開発も、地中の圧力が変わらないよう空気を抜くなど、安全性の高い技術を確立しています。過去に起きた問題を現代に活かしながら、よりよい技術を求め、研究開発を進めていることが分かりました。同じく火山地帯の日本ですが、地熱のほとんどが温泉としての利用に限られています。今回の研修を通し、日本でももっと多くの地熱利用が可能なのではないかと感じました。そうした場合、観光業や現地の人の理解が必要不可欠です。ただ、ニュージーランドでも先住民族マオリの方たちの理解を求めながら開発を進めています。その点に関しては日本もニュージーランドも同じです。日本に活かせる経験がたくさんあるように思いました。私は震災時に停電を経験しました。その際、家庭用の太陽光発電でお湯を沸かしたり、携帯を充電したりした経験から、再生可能エネルギーに強い関心を持つようになり、今回の研修に参加しました。今回、政府機関や研究所、実際の地熱発電所など、さまざまな施設を訪問し、ニュージーランドのエネルギー事情を深く学ぶことができました。ニュージーランドも日本と同様、都市部に若者の人口が集中しており、現在開発が進んでいる地熱発電は、地方の雇用創出、活性化にも役立つと期待されています。地熱発電所の開発は民間企業が行っており、開発のためには、まずは土地を持つ先住民族マオリや地元の人との交渉から始まるそうです。政府が手助けしながら交渉を進め、発電所をつくる際は、今回訪問した研究所GNSサイエンスが協力します。また、地熱の直接利用も増えており、発電だけでなく、温室やエビの養殖、ハチミツの加工、乳製品の加工などにも使用されています。こうしたさまざまな産業での地熱カスケード利用は、非常に経済的で環境負荷の少ない効率的な方法だと感じました。ニュージーランドが再生可能エネルギーに関して高い目標を掲げられるのは、日本と異なり人口密度が低く、水力や地熱発電だけでも大部分の電力供給が可能であるためでもあります。しかし政府、研究所、地域の人々、企業、それぞれがうまく交渉・連携する体制があり、再エネ開発が進めやすい環境が整っているという点においては、日本も参考にできることが数多くあるのではないかと思いました。またニュージーランド人は自らのことを固有種である「kiwi(キーウィ)」と呼ぶこともあります。こうしたところからも、ニュージーランドの人々にとって固有種は身近であり、自然環境の保護・保全への意識が高いことが伝わってきました。優しくおおらかなニュージーランドの人々ですが、環境保護の取り組みからは過去の環境破壊を悔い再び起こさないという「Never Again」の意識を強く感じました。今回の研修では、専門外の分野に関することを学ぶ機会が多く、見るもの聞くものどれもが新鮮でした。環境に関するさらなる興味関心を深め、研修を終えることができました。観光地にもなっている地熱地帯の間欠泉宮下 珠奈さん 繊維学部応用生物科学科(2年) 政府、企業、地元の人々―、連携しながら進める再生可能エネルギーの普及3REPORT平成29年度 環境教育海外研修報告※学年は研修時※学年は研修時ワイラケイ地熱発電所山上 まどかさん 工学部物質化学科(2年) 過去に起きた問題を現代に活かす、ニュージーランドの再生可能エネルギー4REPORT

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