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New Z実施報告会環境教育海外研修2018年度09ニュージーランドは全発電量のうち、約80%が再生可能エネルギーです。最も発電量の多い水力発電に次いで、近年地熱発電の普及が進んでおり、国が率先して調査・研究を行っています。今回の研修では、クリーンエネルギー先進国ともいえるニュージーランドで、再生可能エネルギーがどのように普及し、利用されているのか、日本と比較しながら学習することで、多角的かつ本質的に環境問題について理解することを目的としました。今回の研修で訪問したGNSサイエンスは、地熱利用を促進するために設立された、政府所有の研究機関です。『地質学』『火山学』など、多岐にわたる研究を行っています。『地球化学』『地球物理学』といった、化学的・物理学的視点から研究を行うラボもありました。表層の成分から地中の状態を推測したり、電気伝導度測定で地下の様子を探り地熱水の場所や温度を計測したりする調査方法など、多彩な研究の一端に触れることができました。ニュージーランドでは、再生可能エネルギーの利用率を2025年までに90%にする、という世界的に見ても非常に高い目標を掲げています。どのように実現するのかが課題視されていますが、実際に政府機関や研究所などを訪問すると、やみくもに増やしていこうとしている訳ではなく、しっかりとした戦略に基づいていることが分かりました。また、日本は補助金を出すことで民間による技術開発を促すのに対し、ニュージーランドでは国が率先して調査研究を推し進めていることも印象的でした。国が積極的な姿勢を示すため、企業もビジネスに乗り出しやすいそうです。環境政策の促進の仕方自体に大きな違いを感じました。今回ニュージーランドの特色あるエネルギー事情と豊かな自然との向き合い方を学ぶことができました。ここで得られた経験を、今後にも活かしていきたいと思います。私は現在、生態学について学んでおり、1年次から霧ヶ峰高原で天然記念物の保護・整備を行う霧ヶ峰自然保護指導員としても活動してきました。今回の研修は、ニュージーランド独自の生態系保全や環境保護政策について深く学びたいと思い参加しました。訪問先のひとつ、トンガリロ国立公園では、希少種の保護・保全のため、発信器を利用したテレメトリー調査や、犬を使った個体数調査などを見学しました。外来種駆除のために開発された毒餌「1080」の概要説明も受け、実際の罠の設置などにも同行させてもらいました。ニュージーランドにおける外来種の侵入は9世紀頃から始まり、17世紀のヨーロッパ人の入植、20世紀の人為的環境操作などにより、その数を増加させてきました。ニュージーランドでは、2050年までに外来哺乳類を根絶する「プレデターフリー2050」を掲げ、とくに希少種を捕食するドブネズミやイタチ、オポッサムに対し、集中的な対策を行っています。しかし駆除が難しいことを理由に対象外になっている生物もあり、それらが分布を拡大していることが問題となっています。集中的な対策は費用対効果が高いのに対し、他が手遅れになる可能性もあります。良い面だけでなく、多くの課題があることも知りました。ニュージーランドは、政府が掲げる「ニュージーランドを最も住みやすい国にする」という理念を多くの国民が理解し、支持しています。政府、国民、企業がバランスを取りながら取り組みを進めており、環境保護と豊かな生活を両立させながら暮らしていくことが重要だという意識が、国の隅々にまで浸透している印象を受けました。人口密度の低いニュージーランドと異なり、日本は小さな自然を多くの人が管理・利用しています。ニュージーランド以上に、環境意識の向上が不可欠です。ニュージーランドのように「何のために保全するのか」をより明確にし、環境サービスの利益還元も重視していく必要があると思います。さまざまな価値観がある中でバランスを取りながら環境問題に向き合っていく重要性を改めて感じました。井川 洋さん 理学部理学科物質循環学コース(2年) 人も自然も住みよい国へ。ニュージーランドの環境保護・保全の考え方1REPORT鈴木 大成さん 繊維学部化学材料学科ファイバー材料工学コース(2年) 再エネ先進国で学んだ最先端研究2REPORT※学年は研修時※学年は研修時吸収スペクトル測定による石の組成調査テレメトリー調査に同行

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