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06藤島 私は上智大でも教えていて思うのですが、これまでの受験生は「偏差値」を基準に大学を選んできましたよね。まずは気にする数字ですから。でも最近、偏差値だけで大学を選ぶという常識が少しずつ変化してきているように感じています。とくに国立大学の場合は「自分がそこで4年間過ごしたらどういう大人になるだろう」という想像力を働かせた上で選ぶ時代になってきているように思う。だからこそ「信州大学はこういう大学なんですよ」という「北極星」=「旗」を立てる必要がある。その旗に賛同する学生さんどうぞ来てください、あるいはこの旗に賛同する研究者の方、職員の方、ぜひ来てください、というPRをする時代になってきていると思います。 生き残りをかけて大学もブランディングに力を入れていますが、結局受験生がどれだけ増えたか、という競争になっているケースが多い。でも本当はもっと理念的なところでブランディングをしていきたいはずなんです。伊藤 国立大学の事情では、企業や行政にも刺さる言葉が必要ですね。川崎 僕は、翻って、やっぱり学生がしっかりしていなければ企業も魅力を感じづらいと思います。外から見て、学生がワクワクするような面白い発想で研究や活動に携わっているのを見ると、研究者も集うだろうし、企業も組みたいと思うはずです。まずパワーを向けるべきなのは学生ではないかと。谷 確かに、今の企業は、柔軟に対応できる人が求められるようになってきましたよね。面白い発想や研究をしている学生が入社した企業は魅力的になっていると思います。学生が就職活動を行うにためも、企業を象徴するコピーが必要不可欠かもしれません。 私がかつていたサントリーの話をすると、事業が多角化する中で企業をひとつに表す言葉を制定することになり、2005年からは「水と生きる」を会社のヘッドラインに掲げています。行動様式には創業者の鳥井信治郎の口癖だった「やってみなはれ」。創業70周年の1969年に社員の行動指針にも制定され、今も脈々とサントリーのDNAとして受け継がれています。 1989年に企業理念として掲げた「人と自然と響きあう」もいいコピーなので、よく使われています。やはり外から見て、その団体が何を目指しているのかすぐにイメージできるような言葉は大事ですよね。いいコピーであれば、長く受け継がれます。伊藤 信州大学を魅力的に表現するシンボリックな言葉を策定すべき、ということですね。伊藤 それではいよいよ 信州大学のブランドイメージなりを考えたときに、核となるものについて伺います。藤島 キャンパスにいると視界の中に必ず「山」が写る。この環境は他では得られないもの、とくに県外出身者が多い信州大学の学生は、大きな影響を受けると思います。 それともうひとつ、信州大学の学生は徒歩や自転車通学がほとんどなので、電車に乗る時間が都会の学生より圧倒的に少ない。つまり首都圏よりスマホに触る時間が少ないですよね。スマホから得られる情報は、ほとんどが受け身です。でも信州大学の学生は、ボーっとしている時間も含めて「考える時間」が都市部に比べて非常に多いのではないかと思うのです。考える時間がないと人は育ちません。この山々に囲まれた環境と考える時間の多さは、学生にとってすごく有意義に働くんじゃないかと思います。NEXT PAGE小西 弘樹氏信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー(株)日本人材機構経営企画本部シニアマネージャー(広報担当)アートシンキングの時代信大生は遠くも近くも複層的に見られる(川崎)大学のングをるアルプス、独創性、そしてファーストペンギン1994年(株)日刊スポーツ新聞社(記者・特派員)、2007年(株)鹿島アントラーズ・エフ・シー(広報・事業担当)を経て、2015年に(公財)ユニジャパン入りし、東京国際映画祭の運営責任者を務める。2017年(株)日本人材機構に入社し、自社およびクライアント企業の広報・PR戦略を策定している。2002年朝日新聞社入社広告局の外務営業、報道局の記者を経て2013年コンテンツプロデュース部2015年中東へ留学2016年メディアビジネス局朝日新聞社メディアビジネス局信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー氏川崎 紀夫1985年 ㈱電通入社 以来クリエーティブ局2008~2013年 上海電通赴任2014年 ブランドア㈱創設2013年~ 上智大学講師「メディアと社会(広告論)」
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