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05おりで、学内やスタッフ、研究者のモラルアップのためにも「広報」の力は必要不可欠だと思いますね。これは「広告」ではできないことです。 私が以前サントリーで広報を担当していたときのことですが、社内のワイン研究所の研究員が「赤ワインは体にいい」という研究成果を出したんです。海外雑誌に論文を発表し、プレスリリースしたことで国内の新聞に小さい記事ですが載りました。それをきっかけに、圧倒的な事実として瞬く間に世間の常識になり、ワインの市場を大きく変えました。当時、私が担当していた広報誌等に「こっちの研究も取り上げて欲しい」と声がかかるようになり、社員のモチベーションアップにつながった良い事例です。伊藤 インナー対策、重要ですよね。総合大学なのでよくわかります。さて次は、信州大学が実施した「信州100年企業創出プログラム」が全国の放送や新聞紙面で取り上げられましたが、その仕掛け人、小西さん、いかがですか。小西弘樹さん(以下敬称略) 「信州100年企業創出プログラム」は、国立大学の利点をうまく見せられた例だったと思っています。今回の成功のポイントは「客員研究員」という5文字。これまでも、都市部の人材と地方企業との連携を支援する事例はありました。でもこのプロジェクトが他と違った点は「客員研究員」というキーワードがあったこと。都会の社会人を客員研究員という形で大学に招くなんて、国立大学にしかできないことです。この5文字が入っただけで、メディアの反応が変わりました。 わかりやすく、見出しになりやすいキーワードがあるとメディアは取り上げやすい。事業内容そのものの魅力に「客員研究員」という包装紙をつけることができたことが、今回の成功のポイントだったのではないかと思います。 根源的な話になりますが、PRでは言いたいことよりも課題になっていることを掘り下げた方がよくなるケースが多い気がします。最近の例だと、広島に全国的に有名だった「千福」というお酒があって、近頃の日本酒離れで業績が悪化していました。ヒアリング時に聞いた100年前の初代社長のお母さんと奥さんの名前の二文字をとって「千福」と名付けたという素敵なストーリーがあり「百年、大事な女(ひと)を想い続けたお酒」というキャッチコピーを作って、インナーにも発信したら社員からアイデアがどんどん湧いてきて、ヒット商品も生まれるようになりました。伊藤 お酒のブランディングですね。そこは谷さんのテリトリーですね(笑)川崎 「見出し」と「言い換え」は本当に重要ですよね。みなさんご存知の「Yahoo!ニュース」では、13.5文字で見出しを作るそうです。明快なライティングメソッドですね。谷 先ほど「北極星」が何かという話がありましたが、やはり、大学そのものの目標を言葉とビジュアルではっきり表すことが求められているように感じますね。伊藤 確かに「信州大学ってどんな大学?」と問われて一言で表すことができたら素晴らしいと思っています。エレベーターピッチで説明できる、一歩踏み込んだ新しいセンテンスを作りたいですね。外部広報アドバイザー信州大学広報スタッフ会議座談会ブランドを意識せずシンプルに目指すべき「北極星」を定める。(藤島)信州ブランディ考えthemeブランドイメージをつくる「見出し」や「言い換え」ブランドア㈱ 代表取締役(元電通)信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー氏藤島 淳1976年サントリー(株)入社、広報課長、広報誌編集長等を務める。1997年、デジタルCS放送局ジャパンイメージコミュニケーションズ取締役副社長就任。その後、日本農芸化学会広報委員、東京農工大出版会編集委員、等を歴任。日本旅行作家協会会員。広報コンサルタント(元サントリー広報部)信州大学広報スタッフ会議外部アドバイザー氏谷 浩志信州大学総務部総務課 広報企画幹(広報室長)信州大学広報スタッフ会議チーム・マネージャー伊藤 尚人
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