理学部研究紹介2019
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4数学科数理科学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像数学科数理科学コース谷内 靖 研究室Navier–Stokes方程式はこの写真のような水の流れを記述する方程式。非圧縮性 Navier–Stokes 方程式と呼ばれる連立偏微分方程式。名古屋大学理学部物理学科卒業、名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了、名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士課程後期課程修了。非線形偏微分方程式を研究している。谷内 靖 教授私の研究室の卒業生は、高校の教員や公務員になるものが多くいます。卒業生が、数学の研究を通して培った思考力を発揮し、社会に貢献してくれることを期待しています。偏微分方程式とは、未知関数とその偏導関数を含む方程式のことです。多くの物理現象や社会現象は偏微分方程式によって記述され、偏微分方程式の数学的解析は自然科学全般で重要な役割を果たします。私の研究テーマは非線形偏微分方程式、特に流体の力学の基礎方程式を研究しています。流体には非圧縮性流体(縮まない流体)と圧縮性流体(縮む流体)があります。たとえば、水は非圧縮性流体であり、空気は圧縮性流体(縮む流体)です。私は非圧縮性流体の運動を記述する非圧縮性 Navier–Stokes 方程式を関数解析的に研究しています。非圧縮性 Navier–Stokes 方程式とは右のような連立の偏微分方程式です。詳しい記号の説明は省きますが、uは流体速度、pは流体の圧力を表す未知関数です。流体の流れの解析『射影平面』という図形を 3 次元空間に実現した図で、『Boy曲面』と呼ばれる。射影平面の性質により『自己交差』が生じる。(図は“Sketches of Topology” より)『結び目』の例。多様な絡まり方は、3 次元空間の性質を反映している。(図は“knot atlas”より)境 圭一 研究室東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了。学術振興会特別研究員、信州大学理学部助教などを経て、2016 年より現職。専門はトポロジー。境 圭一 准教授社会を支える科学技術、その基礎の一つが数学です。筋道を立てて考える能力を生かして、システムエンジニアなどとして活躍している人もいれば、中学・高校の教員となっている人もいます。4次元、5次元、…といった高次元の『図形』は、決して夢物語でなく、素粒子論の世界などでは実態を伴って研究されているものです。我々の目には見えない高次元の世界を『見る』手段の一つとして『埋め込み』は有効です。さらに、個々の埋め込みは互いに関連しており、その関連を利用することで、全く新しい図形を生み出すこともできます。こうして幾何学の世界がどんどん広がっていきます。境研究室では『幾何学』を研究しており、テーマは『多様体』と呼ばれる図形の『埋め込み』です。埋め込みのもっとも代表的な例は『結び目』です(右上図参照)。このように、図形を(高い次元の)空間内に実現するのが『埋め込み』です。輪が様々な絡まり方をする理由は、我々の住んでいる3次元空間の性質にあります。幾何学で研究される図形の多くは、輪より複雑でわかりにくいのですが、例えば3次元空間のようにわかりやすい図形に埋め込むことで、その図形が『見える』ようになり、様々な性質がわかるようになります。埋め込みの諸相  ―高次元の図形を『見る』には

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