理学部研究紹介2019
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3数学科■■■■■■■■■■■■■■研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像数理科学コース数学科数理科学コース論文予稿の一部。 上の手書きノートの内容に相当する定理。研究ノートの一部。 証明できる内容を書き留めてある。東京大学理学部数学科卒。博士(数理科学)。専門は位相幾何学。五味 清紀 准教授当たり前のことですが、私の研究室で学んだ学生がいたとして、その学生が将来どのような道に進むのかは、その学生次第です。未来のことは誰にもわかりません。これは、研究の世界に限らない、世の中の観測的真理です。私の研究は、ごくごく目先のところでは、ある種の物理系の分類をするために必要な計算に役立つことがあるでしょう。ですが、それ以上にどんな広がりを見せるのかは「わからない」と答えるのが、研究者としての最も誠実な回答です。五味 清紀 研究室私は物理に関わるような位相幾何学(トポロジー)を研究しています。幾何学と言えば、中学校くらいで、平面上の三角形を勉強したことを思い出す人もいることでしょう。ですが、現代数学における幾何学は、三角形などの図形が描かれるような舞台・入れ物である「空間」を研究対象とします。平面というのは、そのような意味で、「空間」の一つです。球面も「空間」の例です。平面と球面とは直感的には違いますが、その正当化には数学の道具が必要です。様々な空間の違いを調べる数学的な道具は、物理学と関連することがあります。そのような道具を、私は研究しています。トポロジーと物理Y 字型の図形の上の2点の成す配置空間上端と下端を止めたまま、切らずに赤い紐を手前に持ってくることはできない。1989年3月京都大学で修士号を受けた後、1993年2月米国ロチェスター大学でPh.D.の学位取得。1993年4月から信州大学で教鞭を取り、 現在に至る。玉木 大 教授トポロジーの考え方を直接使う職業は多くありませんが、トポロジーを学ぶ際に身につけた鳥瞰的な視点や、本質的な情報を不変量で取り出すという考え方は、どのような職業に就いても役に立つはずです。ポアンカレが19世紀末に創始して以来、トポロジーは抽象的な理論として発展してきましたが、20世紀後半になって数理物理学や他の数学への応用が発見されてきました。そして、21世紀に入って医学、生物学、工学といった様々な分野で応用が発見されています。これから更に、「連続的変形」の理論の応用が広がることを期待して、研究しています。玉木 大 研究室私の専門はトポロジーと呼ばれる分野です。その中でもホモトピーという「連続的な変形」を中心に研究しています。例えば、右上の図は 3 本の紐が絡まった状態ですが、「連続的変形」とは、紐を切らずに動かすことを意味します。図の赤い紐を切らずに他の2本の紐から外して手前に持ってくることは不可能です。この3本の紐は、3つの点が上から下に移動するときの軌跡とみなすこともできます。つまり平面の中で3点が互いに交わらないように動く方法を表しています。一般に、ある図形の中で複数の点が互いに交わらずに動く方法を調べることは、重要な研究課題です。そのような配置空間の理論を研究しています。連続的変形の意味を考える

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