理学部研究紹介2019
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31理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像 微生物微生物採取した土壌を対象に、微生物実験や化学分析を行う。有機物を微生物が分解することで、炭素や窒素、リンといった元素が循環し、微生物だけでなく他の生物にも利用できるようになる。研究により身につく論理性やプレゼンテーション能力は、文系、理系に拘わらず強力な武器となります。卒業生は、研究者や中学・高校の教員、分析会社といった理系の職種から、公務員などの文系の職種まで幅広い分野で活躍しています。1998年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。とくに森林土壌において、炭素や窒素、リンの循環に関わる微生物の働きについて研究している。また重金属汚染についての研究も、学生時代から継続中。國頭 恭 教授國頭 研究室土壌中の物資循環における微生物の役割を明らかにすることは、陸上生態系を保全しそのサービス機能を維持する上で有用です。また近年深刻になっている環境問題に対応する際にも重要です。例えば、温暖化にともない微生物による土壌有機物分解と二酸化炭素放出が増加するのか否かという問題は、現在まで解明されていませんが、微生物がいずれの応答を示すかで、将来の気候変動にも大きな影響を与えます。私たちの身近に存在する土壌は、植物の生育を通して全ての陸上生物を養っているだけでなく、多様な元素の循環など、様々な機能を有しています。また近年では地球温暖化が大きな問題となり、土壌の炭素貯蔵にも関心がもたれています。土壌中には、細菌、糸状菌、微小藻類、原生動物、ウィルスといった肉眼では観察できない微生物が数多く生息しています。様々な微生物が、植物が光合成でつくった有機物を分解して無機物として放出することで、植物の再生産が可能となります。このように、微生物は生態系の物質循環にきわめて重要な働きを持っています。一握りの土の中にも無限の世界

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