理学部研究紹介2019
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30理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像地域の植物がどんな動物に利用されているかを知ることも生態系を知る上で重要。コオニユリを吸蜜するミヤマカラスアゲハ。信州の豊富なフィールドで実習、調査、研究ができるのが信州大学の強み。学部生の研究が出版される研究になることも。卒業生の中には、大学での学びを活かした専門職についた人も多くいる一方、一見、大学で学んだこととは関係ない職業についた人もいます。しかし、大学で学ぶということは、人とのかかわり方、問題の発見・解決能力、幅広い教養などを身につけることでもあります。そうした能力は、社会に出て、どのような場面でも生かされます。千葉大学大学院にて博士号を取得後、横浜国立大学、電力中央研究所、国士舘大学非常勤講師等を経て、2002年に信州大学へ着任。助教授を経て准教授。専門は森林を中心とした植物生態学。島野 光司 准教授植生・生態研究室日本人は、古来より自然とともに、自然に生かされながら生活をしてきました。我々を取りまく自然の成り立ちの仕組みを知っていけば、人は自然とうまく付き合っていくことが可能でしょう。植物の生き方を明らかにし、それを利用する動物の生態を明らかにしていけば、地域の生態系の仕組みを知ることができます。自然を、地球をまもるためにはその成り立ちを知ることが第一歩なのです。これまで人間は自然を利用し、文明を発展させてきました。しかしその一方で、過度な自然の利用などで、自然を壊しつつあるという側面もあります。人間が自然とうまく付き合っていくには自然環境の仕組みを知る必要があります。物質循環学コースでは、地球、自然がどのように成り立っているかを明らかにする研究を行っています。こうした中で、植生・生態研究室では、森林や草原、湿原などの植物がどのように生活しているのか、更にそうした植物たちが、どのような動物たちを養っているのかといったことを明らかにし、自然の摂理とその守り方を追求しています。自然環境を知る。自然環境を護る。理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像アオコ毒素microcystinの動物体内での毒性発現と代謝機構諏訪湖におけるアオコ毒素の動態(ミクロシスチンmicrocystinの生産・摂食・蓄積・分解及び流下)朴研究室では湖沼や川の水質調査や生物が生産している二次代謝物質の分析やバイオアッセイの方法を身につけることから、国、自治体や民間企業の分析分野及び浄水場、環境アッセスメント分野などで活躍されています。「生物は如何して毒を作るのか?」を命題に藍藻が生産している毒素の研究を始めて20年が過ぎました。毒素の生産・分解・動態の機構を明らかにすることは水因性の健康リスクを軽減することも可能であり、さらに毒素の生態学的な意味を明らかにすることでアオコ制御の技術開発にも発展できることも期待できます。信州大学医学部で学位を取ってから、1994年から信大理学部で学生諸君と諏訪湖におけるアオコ毒素の動態の研究を始め毒素分解菌や毒素の蓄積に関する研究を行っている。朴 虎東 教授朴 研究室私たち人間の活動は環境に様々な影響を与えています。特に湖沼・河川は集水域における人間活動の環境負荷の結果が複合的・集中的に現れ、もっとも人間活動の影響を受けやすい環境とも言えるかもしれません。たとえば、淡水赤潮・アオコの発生は、人間活動の環境への負荷によって水界生態系のバランスが崩れ、ある特定の生物だけが増殖した結果なのです。これらの生物の中には毒性物質を生産する種があり、湖沼の生物相に影響を与えるばかりでなく、水道の水質問題など私たちの生活にも影響を及ぼしかねません。朴研究室では、アオコを形成する藻類の中でも「藍藻類」、特にMicrocystis 属が生産している毒microcystinの生態系動態や人間への影響について研究をしています。湖沼のアオコ毒の生産-蓄積-代謝-分解-動態のメカニズムを解明したい

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