理学部研究紹介2019
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28理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像理学科物質循環学コース研究から広がる未来卒業後の未来像長野県の諏訪湖における測定。湖からの蒸発やメタン放出のメカニズムを明らかにしようとしている。アラスカの北方林における測定。北極域は温暖化の進行が早く、それが炭素循環に及ぼす影響を明らかにすることが重要。岡山大学修士課程、筑波大学博士課程を修了後、アラスカ大学や京都大学の研究員を経て、2014年に信州大学に着任。助教を経て准教授。主に地表近くの大気運動や大気と生態系の相互作用を研究。岩田 拓記 准教授微気象学研究室私の研究室の卒業生は、修士課程に進学したり、環境関係の会社や一般企業へ就職したりと様々です。どのような進路となっても大学での研究を通して学んだことを活かして活躍してほしいと思っています。現在、地球温暖化などの環境変化が問題となっていますが、これらの環境変化は物質循環のバランスがくずれることが一因となって生じています。温室効果ガスは気候に影響を与えますが、その大気中の濃度変化は大気と生態系の間の交換量の変化によって引き起こされています。したがって、この交換量の変化と環境のつながりを明らかにすることは、将来の気候を予測する上で重要と言えます。大気と地表の生態系との間では水や炭素などの物質の交換がおこなわれています。これらの物質交換は、その生態系を取り巻く環境により影響を受けると同時に、その環境にも影響を及ぼしています。例えば、森林生態系は光合成や蒸散といったプロセスにより大気と二酸化炭素や水蒸気を交換していますが、その交換は日射や気温、湿度などの環境変化に応答して刻一刻と変化しています。また、この水蒸気交換は周辺の大気の湿度に影響を与えています。これらの交換量と環境の変化を野外で連続的に測定することで、物質循環と環境のつながりの解明を目指しています。水や温室効果ガスの交換と   環境のつながりを明らかにする水路を使った堆積実験。川や海でみられる地形や堆積構造がどのようにできるのか、実験的に発達プロセスを解明する。フィールド調査。女鳥羽川にみられる地形の変化がどのように生じたのか、現地で調査しながら議論し、自然環境に対する理解を深める。卒業研究として、フィールドに出て問題を発見し、それに取り組んで研究論文としてまとめます。身につけた能力や地球科学の知識は、自然に富んだ日本列島で生活していく上で生かされます。環境コンサルタントや資源関係の仕事に就く学生がいる一方で、教員や学芸員などの教育研究・普及活動に向かう学生もいます。私たちは日本の厳しい自然に囲まれて、その自然とうまく付き合いながら生きてきました。しかし、近年ではその付き合い方を忘れがちになってきているようです。そのためにさまざまな自然災害や環境問題に直面しています。自然の成り立ちを広く深く理解していれば、私たちはそこからより良い地球との付き合い方を見つけられるはず。まずはすぐそばにあるフィールドから目を向けてみましょう。日本学術振興会特別研究員(DC)、信州大学理学部助手、講師、准教授を経て、2019年から現職。専門分野は堆積学。フィールド調査と水路実験を駆使して環境形成の謎に挑んでいる。村越 直美 教授村越 研究室地球環境の成り立ちに欠かせない『物質循環』のなかで、環境の土台となっている「地形」の変化および「堆積物」の運搬・侵食・堆積プロセスや、それらと生物との相互作用について研究しています。これらの研究成果が地層に記録された環境変遷を解き明かす鍵となります。   地球環境はどのように作られ、どのように変化していくのだろうか?自然界には美しいものがたくさんあります。とくに堆積物が記録している縞模様。地層の縞々、流れや波の縞模様、生き物の消長が示すリズム、気候変動がもつリズムなど、堆積物が記録している縞模様を研究して環境形成の本質に迫ります。 地表環境の成り立ちを理解する。

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