理学部研究紹介2019
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27理学科理学科生物学コース生物学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像光操作により誕生した双頭ゼブラフィッシュの稚魚。受精卵から体ができる仕組みを解明する過程で生まれました。毎週開催の研究室セミナーは大学院生・卒論生が主体的に運営。数時間にも及ぶ議論も日常的。熱論の末に新規発見される成果も多い。(左)ゼブラフィッシュの胚にマイクロインジェクションしている様子。(右)ゼブラフィッシュの胚に紫色のレーザーを当てている様子。国内外の雄大な自然に入り込んでのフィールドワークから実験室内での緻密な遺伝子解析まで、「マクロ・ミクロ生物学」を共に実践。生物学だけでなく化学、物理学など様々な知識・スキルを身につけられます。分野や業種の垣根を取り払い、クリエイティブな発想で世間を驚かせるユニークなものを創出し、社会で活躍しているでしょう。研究活動を通して研ぎすまされる理学的(論理的)思考力は、どのような世界においても基盤となり得る強靭なものです。研究を発展させながら研究者の道へ進む卒業生、中学・高校の教員や博物館の学芸員として科学の魅力を伝える卒業生、企業や行政で活躍する卒業生たちがいます。信州大学理学部物理科学科、同大工学系修士修了。理化学研究所、北海道大学勤務を経て2019年信大に帰ってきました。現在は生命現象を光操作する研究をしています。筑波大学生物科学系、科学技術庁および日本学術振興会の科学技術特別研究員(生物資源研究所)を経て、2004年に信州大学理学部助手、2012年准教授、2017年より教授。専門は、系統進化・系統発生学、および分子系統地理学。小笠原 慎治 助教東城 幸治 教授分子光遺伝学研究室系統進化学研究室光遺伝学は農学から医療まであらゆる生命科学分野に応用できるバイオテクノロジーです。開発した手法や研究過程で得られた知見を有用生物創生に応用したり、立体臓器の人工作製へ応用したりするなどの未来を描いています。培養槽に浮かぶ多能性幹細胞の塊に四方八方からレーザーが照射され、徐々に臓器ができあがっていく、そんなシーンを想像してみてください。東城研究室では、系統進化の鍵を握る生物種群を対象に、系統進化・系統発生学的研究をしています。進化史の追究は過去を紐解くものですが、過去を知らずして未来を切り拓くことはできません。過去の進化史や生物多様性が創出される機構を科学的にきちんと理解することはとても大切なことです。私たち人類が生物界において、また、生態系内においてどのような存在であるのか、これらの論考を通して「自然の理」を理解することは、将来にわたって人類が幸福に暮らしてゆくための大きな礎となるはずです。光遺伝学は神経活動や遺伝子発現、タンパク質の働きを光で操作し、従来の手法では調べることができない生命現象を解き明かしたり、生命科学へ応用したりする新しい研究分野です。小笠原研究室では、遺伝子組換え・ゲノム編集などの遺伝子工学(生物)、化合物を創出する有機合成(化学)、レーザーを用いた光学(物理)など様々な分野を融合し、新しい光遺伝学の手法、装置を開発しています。また、開発した手法で培養細胞やゼブラフィッシュの胚を使って、細胞分化や発生における遺伝子発現プログラムや神経細胞の可塑性(記憶)に関与するタンパク質の機能解明に取り組んでいます。東城研究室では、系統進化学的に重要な位置づけにある生物種群(鍵分類群)を対象に、その系統進化や系統発生のプロセスを追究しています。生物界最大の種数を誇る昆虫類を中心に、多様な生物種群に注目しています。対象は現代を生きる生物種群ですが、その形態や発生プロセスには過去の進化史が刻み込まれていますし、もちろんDNAにも過去の歴史がしっかりと刻み込まれています。これらの情報を注意深く丁寧に読み解きながら、現在から過去数億年前にまで溯る様々な時間スケールでの進化史を紐解くような、ワクワク感に満ちた研究です。光で生命を自在に操る現代を生きる生物種群から紐解く『進化史』と『生物多様性』創出のメカニズム

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