理学部研究紹介2019
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22理学科地球学コース研究から広がる未来卒業後の未来像理学科地球学コース研究から広がる未来卒業後の未来像北アルプス焼岳山頂の噴気観測。現在は静穏な焼岳だが、本当は…。今後の変化に注目して継続的な観測を行っている。2014年秋から活発に噴煙を上げている九州、阿蘇火山の中岳第1火口。噴火の様子を間近で観察することは、火山研究の醍醐味の一つである。齋藤 研究室2004年 京都大学大学院修了、博士(人間・環境学)。JSPS特別研究員等を経て、2008年より信州大学。専門は火山学、岩石磁気学。齋藤 武士 准教授当研究室では学生の主体性を特に大事にしています。研究活動を通じて考える習慣と科学的な思考方法について、自分なりのやり方を掴めるように指導しており、それは卒業後も多いに役立つと考えています。最近の進路は、他大学の大学院への進学、地質・建設・資源・GISなどの民間企業、気象庁、教員などです。系外惑星が観測されるようになった現在でも、生命が確認されているのは地球だけです。生命が存在するには液体の水が不可欠だと考えられていますが、原始的な生物は海嶺周辺の熱水噴出孔に生息しており、火山活動も大きな役割を果たしていたようです。熱いマグマと冷たい水の絶妙なバランスが大事だったのかもしれません。火山の研究から、地球外生命やハビタブルプラネットの探索につながっていくかもしれません。私は火山を研究しています。火山に出かけていって溶岩やガスを採ってきたり、火口で温度を測ったりしています。そうして測ったデータや、採ってきた試料を分析することで、昔そこでどんな噴火があったのか、現在どんな活動が起きているのか、これから先どんな活動が起こりそうかを探っています。火山は私たちの住んでいる地球の表面と内部をつなぐドアのようなものです。火山を研究することで、地球の中で今どんなことが起きているのか、かつてどんなことが起きたのか、今後地球がどうなっていくのかについて予想することができます。火山からのぞく、    この地ほし球の現在・過去・未来2017年筑波大学大学院博士後期課程修了。東京大学地震研究所特任研究員を経て、2019年より現職。専門分野は、堆積学、自然災害科学。山田 昌樹 助教山田(昌)研究室研究活動をする中で、物事を論理的に考え、広い視野を持って自然現象を探求ようになってほしいと考えています。また、自分の考えを分かりやすく相手に伝えるスキルの習得にも力を入れています。研究業界のみならず、社会で幅広く活躍できるような人材の育成を目指しています。巨大津波は甚大な被害をもたらします。将来発生し得る地震・津波に備えるため、過去にどのようなイベントが起こったのかを知ることはとても重要です。右下の写真のように沿岸の低地や湖沼の地層を調査することで、古文書などの歴史記録では知り得ない過去数千年前まで遡って地震・津波の履歴を解明することができます。このような地質調査によって過去の地震・津波の規模や発生間隔を明らかにすることで、将来発生し得る地震規模の評価や津波ハザードマップの作成に貢献しています。巨大津波は海底や海浜の砂礫を内陸へと運搬します。これを津波堆積物と呼びます。国内外の沿岸地域で掘削調査を実施し、地層中に残された過去の巨大津波の痕跡(津波堆積物)を見つけ、過去の巨大地震・津波の履歴を解明する研究を行っています。地層中で正確に津波堆積物を識別することは簡単ではありません。そのため、堆積学的検討に加えて、地球化学分析や微化石分析なども駆使しています。また、洪水や台風時のストームによって形成される堆積物の研究も行い、地層中でのイベント堆積物(津波や洪水、ストームで形成される堆積物)の識別基準の確立を目指しています。最近は、コンピューターを用いた津波のシミュレーションや津波堆積物の情報(層厚や粒径)からそれを堆積させた津波の水理量(流速や高さ)を逆解析する研究にも取り組んでいます。地層から読み解く過去の巨大津波別府湾沿岸地域における掘削調査の様子と堆積物コアに認められた約2000年前の津波堆積物。2011年東北地方太平洋沖地震津波によって千葉県旭市の沿岸低地に形成された津波堆積物。

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