理学部研究紹介2019
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21理学科理学科地球学コース地球学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像流動的変形構造。岩石になる前に液状化が起こっていたことを物語っている。右ずれの変形構造。この構造から過去のプレートの沈み込み方向が推定できる。研究では、野外調査に重点を置いており、科学的視点や論理的思考能力を磨く指導を行っています。また、国内外の学会等で成果を発表することにより、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力を磨き、社会で幅広く活躍してもらいたいと考えています。名古屋大学大学院、日本原子力研究開発機構、信州大学助教を経て、2019年より現職。博士(理学)。研究分野は、付加体地質学、構造地質学、応用地質学。常盤 哲也 准教授常盤 研究室私の研究室が研究対象としている付加体は、日本列島の骨格であり基盤ともいえます。よって、付加体の形成過程を解明していくことは、日本列島の生い立ちを理解する上でとても重要なことです。また、地すべりや崩落などの災害をより理解する上でも、基盤の状態を把握することは必要不可欠です。加えて、付加体が作られているところは、巨大地震が発生するところであり、地震がどのようなプロセスで起こっているのかという地震の理解にもつながっていきます。日本列島は、複数のプレートがひしめき合うプレート収束帯に位置しており、海洋プレートの沈み込みによってプレートの一部やプレート上の堆積物が大陸プレート側に付加して形成された“付加体”と呼ばれる地質体が広く分布しています。この付加体は、現在に至るまでに様々な変形を被っており、複雑な地質構造が存在します。私の研究室では、その地質構造のパターンや形成の順番などをひも解くことで、過去のプレートの沈み込み方向や、それに伴う付加体の形成プロセスを解明し、日本列島がどのように作られていったのかということを明らかにする研究を行っています。付加体に認められる地質構造から   日本列島の形成過程をひも解く湖沼でとった湖底堆積物の柱状試料。目では見えないが、この中に小さな化石がたくさん含まれている。地層から取り出した貝形虫殻の写真。殻はこのようなスライドに種類ごとに分けて並べる。マス目の一辺は3.5mmなので大きさが分かる。日本学術振興会特別研究員、信州大学助教、講師、准教授を経て、2019年から現職。研究分野は古生物学、古環境復元山田 桂 教授山田(桂)研究室地質学の知識は、多分野で必要とされています。そのため、建設業界や環境コンサルタント、資源開発の仕事に就く学生が多いようです。また、博物館学芸員、公務員、教員や新聞記者などになって、地質学の普及に務める学生もいます。最近の研究では、寒冷化などの気候が悪化した時期に王朝が滅びるなど、文明の発展に気候変動が影響を与えていたことが明らかになっています。そのため、人間社会の発展のためにも、将来の気候変動を予測することが重要です。私たちの研究で過去の地球の様子やその変動メカニズムを明らかにできれば、この先地球がどのように変わっていくのかを予測する材料にすることができます。映画や漫画の世界に登場するタイムマシンは、まだ実在しません。でも、それがなくても私たちはすでに過去を知る方法を見つけています。タイムマシンの代わりになるすごいもの、それが「化石」です。地層の中に含まれている小さな化石を調べると、人間がまだ地球上にいなかった遥か昔の地球の様子まで知ることができます。私が今注目しているテーマは、日本列島の気候に大きな影響を与えるモンスーン変動です。そのために、小さな化石を使って、縄文時代以降の人々が過ごした日本周辺の降水量や風の強さなどを調べています。「タイムマシン」よりすごい、小さな化石

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