理学部研究紹介2019
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18研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像理学科化学コース理学科化学コース飯山 研究室X線回折による実測とコンピュータ・シミュレーションの組み合わせにより決定したスリット型微小空間中のエタノール分子集団構造新しい測定原理による吸着量・吸着速度測定装置千葉大学自然科学研究科博士課程修了後、日本学術振興会特別研究員(東京工業大学)、信州大学理学部助手、助教、准教授を経て、2017年から現職。専門分野はコロイド・表面化学。飯山 拓 教授装置開発(試料合成)、実験、解析、発表が全てできる人材の育成が研究室の教育目標です。多くの卒業生が化学系企業、装置メーカー等の研究者として活躍しています。博士課程を修了し、大学教員となった卒業生もいます。細孔が持つ「エネルギーを消費することなく分子を捉える」機能は、排気ガスや水道水からの有害物質除去、水素やメタンなどのエネルギー分子の安全な貯蔵、バイオマス由来ガスからの有用な成分の分離などですでに利用が開始されています。分子を「見る」ように現象を理解し、これらの高機能化、新規機能開発に寄与したいと考えています。物質が「混ざる」「凍る」といった身近な現象はアボガドロ数レベル(1023)の非常に大量の分子が存在していることを前提としており、微小空間ではその常識が通用しないような現象が起こりえます。エネルギーや環境の問題解決に資するプロセス開発を目指しています。分子数個分の小さな容器に物質を閉じ込めることが出来たら、それはいったいどのような挙動を示すでしょうか? 身の回りのすべての物質は原子・分子からできていますが、物質系を構成する分子の数が極端に少なくなると固体・液体・気体といった「相」の区別があいまいになったり、通常とは異なる分子混合状態や反応などが生じます。物質の精製や除湿などに利用されているゼオライトや活性炭には、直径1nm という分子数個分の小さな孔(細孔)が大量に存在しています。私たちはこの細孔を「分子を閉じ込める小さな容器」として利用し、その内部に捉えられた分子集団に対してX線や中性子線による構造解析法を初めて適用し、水分子のクラスター(分子集合体)形成や、広い温度範囲で連続的に構造が変化する特異な相転移挙動などを明らかにしてきました。ナノ空間中の分子を見る(c)(d)(a)(b)カーボンナノチューブグラフェンナノカーボン分子群の前駆体化合物が示す特異な物性・機能の一例:(c) 溶液状態および固体状態における高効率な青色発光挙動 (d) 顕微鏡で観察したある液晶相(灰色)から別の液晶相(オレンジ色)へと変化する様子(a) 『カーボンナノチューブ』と『グラフェン』の分子モデル (b) 合成検討を進めている『ナノカーボン分子群』の分子モデル2017年3月弘前大学大学院理工学研究科博士後期課程機能創成科学専攻を修了。博士(理学)取得。2017年4月より現職。主な専門分野は構造有機化学、機能分子化学。関口 龍太 助教関口 研究室必ずしも化学系研究室で得た『知識』が活かせる職種に就けるとは限りませんが、日々の研究生活で培った『経験・能力』は化学が関係しない多種多様な分野の職種に就いた場合においても大いに役に立つと考えています。ベンゼン自体は特徴的な物性や機能を示しませんが、それが直接または間接的に多数つながることで特異な物性や機能を示すようになります。このような化合物は、私たちの身の回りにあるスマートフォンやノートパソコンなどの電子・半導体機器類を支える半導体材料や発光材料としての利用の可能性があり、私たちの研究室で生み出される有機化合物が未来の生活基盤を一変させるような新しい機能性材料になり得る可能性を秘めていると考えています。関口研究室では、自然界に存在しない、または合成が困難な特異な構造を持った新規な有機化合物を創成し、それらの新しい物性や機能を解き明かすため研究を行っています。現在、合成検討を進めているターゲット化合物の一例として、基礎的な有機分子である『ベンゼン(分子式:C6H6)』をチューブ状やシート状に多数つなげたような骨格を持つ『カーボンナノチューブ』や『グラフェン』と呼ばれる構造体の一部分を切り取った骨格を持つ『ナノカーボン分子群』が挙げられ、その合成法の確立を目指して研究を進めています。また、ナノカーボン分子群の合成検討の過程で、それらの前駆体化合物について発光挙動をはじめとして特異な物性や機能が発現することを明らかにしており、そのメカニズムの解明を目指した研究も行っています。『未来を創る』新しい    ナノカーボン分子群の創成!(先鋭材料研究所)

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