理学部研究紹介2019
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17理学科理学科化学コース化学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像アズレンを薬効成分として含んでいる医薬品の一例右:ナフタレン、左:アズレン: 中央のオレンジ色の化合物を原料として、アズレンを合成することが出来る。4年次卒業後は、約3分の2の学生は大学院に進学して、研究を継続しています。大学院修了後は、化学系企業の研究職や中学校・高等学校の教員として社会で活躍しています。アズレン誘導体の中には抗炎症作用や抗潰瘍活性など薬理活性を示すものが数多く存在し、近年では抗腫瘍活性を示すアズレン誘導体も見出され医薬品や化粧品等に幅広く用いられています。近年では、液晶や太陽電池などの材料化学分野への応用も期待されています。これらの理由から、新規なアズレン誘導体の合成と性質の解明は、医薬品の開発や機能性材料を作るうえで重要な課題です。そこで私は新規なアズレン誘導体の合成法の開発と性質の解明を行い、医薬品や有機材料などへの応用を目指して研究を進めています。2009年 東北大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程修了、 博士(理学)、 2010年 信州大学理学部化学科助教、 2017年 同理学部理学科化学コース准教授。専門分野は有機化学庄子 卓 准教授庄子 研究室芳香族化合物は高校の化学の教科書にも記載されている6角形(6員環)のベンゼン誘導体が一般的に知られていますが、当研究室では、7角形(7員環)と5角形(5員環)により構成されている新規芳香族化合物の研究、特に『アズレン』という化合物の合成や性質に興味を持って研究を進めています。アズレンは分子式C10H8の7員環と5員環が縮環した10π電子系の化合物であり、6員環同士が縮環したナフタレン(C10H8)の異性体ですが、その色調はナフタレンと大きく異なり、ナフタレンは無色の化合物であるのに対し、アズレンは非常に美しい青色を有しています。また色調の違いのみではなく、アズレン誘導体とベンゼン誘導体では反応性や物性など多くの点で違いがみられることから、アズレン誘導体を利用した医薬品や有機材料の開発が国内外で近年、精力的におこなわれています。新規芳香族化合物の合成研究太田 研究室アイディアをすぐにフラスコの中で試せるのが化学の強み。日々の実験の積み重ねから新しい化合物がうまれる。酸化還元駆動型分子ピンセットの原理図(上)と実際に合成された化合物の分子モデル(下)信州大学大学院理学研究科修士課程、総合研究大学院大学数物科学研究科博士課程修了。2017年から現職。専門分野は有機化学、有機機能化学太田 哲 教授研究室を出た学生の多くが化学系企業の研究職に就いています。今後社会に出てから直面する新しい課題にも柔軟に対応できるよう、研究室では化学の基礎原理に立ち返ってよく考えて研究を行うように指導しています。 機械のような動きを示す分子を作ることは非常に挑戦しがいのあるテーマです。当研究室では、さまざまな動きを示す有機分子の開発を進めています。分子ピンセットはその一つです。今は基礎研究の段階のため捕捉対象は簡単な分子やイオンに限られていますが、将来は適切な分子設計を行うことによって、希少有用物質の回収や有害物質の除去といった応用が期待されます。「分子サイズのピンセットで分子やイオンをつかむ」私たちの研究室ではこのような研究を行っています。独自に開発した『酸化還元駆動型分子ピンセット』は、右図に示すように酸化還元反応に応答して構造が変化する「駆動部位」と、対象物質を捕らえる「分子認識部位」から構成され、分子認識部位の間隔が変わることによって対象物質をつかんだり放したりすることができます。その動きは実在のピンセットに似ています。当研究室ではこうした分子を使って、特定の金属イオンや分子をつかんだり放したりすることに成功しました。酸化還元反応によって動く      分子サイズのピンセット

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