理学部研究紹介2019
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数学科数理科学コース現代生活を支える基礎科学「微分積分などの高校以上の数学など役に立たない」などと言う人がいます。しかし私たちの身の回りには高度な数学があふれています。例えば、スマートフォンなどの通信機器、またごくありふれた家電製品などでも、どれだけの高度な数学が利用されているか分からないほどです。また、近年の情報理論においては「有限」の数学の重要性が増していています。私の研究の主題は「代数的組合せ論」です。情報のノイズなどを取り除く「誤り訂正符号」、効率の良い配置を考える「配置理論」など、「組合せ論」の扱うことは非常に多岐に渡ります。そのうち、性質の良いもの、美しいもの、の多くは代数的に良い性質をもっています。これらのものを高度に抽象化したものに「アソシエーション・スキーム」があります。それを「代数学」、特に「環論」、「表現論」の手法を用いて研究しています。与えられた空間に与えられた形のものをなるべくたくさん入れることを考えます。すき間なく埋め込むことができるのであれば簡単ですが、一般には未解決で、非常に難しい問題の一つです。これは「最適化問題」の一つであって、「配送システム」や「スケジュール管理」など、多くの実用的な応用をもつ問題です。そして「配置理論」の重要な応用例でもあります。私の研究は基礎的なものであって、それが直接的に生活に役立つことは期待しにくいですが、将来何らかの形で何かの役に立つことを期待しています。私のセミナーで学んだことが卒業後の仕事に直接役に立つことはないでしょう。しかしセミナーで学ぶことは学生の能力を十分に伸ばしていると思います。その力をどう活かすか。卒業後の進路はその人次第です。対称デザインFano plane花木 章秀 教授千葉大学大学院修了博士(理学)山梨大学工学部助手信州大学理学部、講師、助教授、准教授を経て、現在信州大学理学部教授距離正則グラフShrinkhande Graph花木 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像はじめに凡  例この冊子は、高校生や一般市民のみなさんに、信州大学理学部でどのような研究が行われているかを紹介するものです。理学部の全教員が、いま行っている研究内容、研究から広がる未来、そして卒業後の未来像について、わかりやすくメッセージを綴っています。理学部は、自然現象の不思議を解き明かし、物事の本質を突き詰める研究を行う学部です。理学部で行われている研究は基礎的なものが多く、その学問の性質上、研究の成果はすぐには役に立たないかもしれません。しかし、例えば電磁波の発見が無線通信の実現につながったように、いずれ社会に革新的な変化をもたらす潜在力を秘めています。そのような萌芽が、本冊子の随所にちりばめられていることが、読んでいただければわかると思います。掲載の順番は、数学、物理学、化学、地球学、生物学、物質循環学の各学科・コースの順になっています。一つ一つ読み進むと、それぞれの研究内容は一見バラバラに見えるかもしれません。しかし、どれも自然の美しさや驚きに魅せられ、それを解き明かそうとする点で共通しています。そのような研究への情熱や真理探究への熱意、それが自然科学の府としての理学部の神髄です。最後に、本学に興味を持って下さった高校生のみなさん、理学部のホームページ上にある「理学部クエスト」もあわせてぜひご覧下さい。もっと詳しく各教員の研究内容を知ることができます。この冊子が、みなさんが進路を選ぶにあたっての一つの道しるべとなれば幸いです。信州大学理学部長 市野 隆雄教員の研究の一部を写真や図とともに紹介研究から広がる未来卒業後の未来像教員のプロフィール

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