理学部研究紹介2019
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15理学科理学科化学コース化学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像合成した化合物のエックス線回折パターンを解析し、金属錯体の構造を描いた図。金属のまわりを色々な配位子が取り囲んでいる。合成した化合物の走査型電子顕微鏡写真。柱状の結晶が相互貫入した十字型の結晶を形成していることがわかる。大阪大学大学院理学研究科博士課程修了。筑波大学助手、広島大学助手を経て、2012年から現職。専門は無機物理化学、固体化学。粉末X線回折のリートベルト解析に、はまっている。大木 研究室大木 寛 教授卒業後に就職する職種も企業も様々ですが、研究室で培った「論理的思考力」と「粘り強くやり抜く力」で、どのような分野においても活躍できる人材となることを期待しています。これまでに、金属錯体は他の有用な化合物を合成するための触媒として用いられたり、他の化合物を貯蔵する容器として用いられたりしてきました。私たちが作っている金属錯体が、いずれそのような用途に使われることがあるかもしれません。また、全く新しいタイプの金属錯体を合成することで、これまでに知られていない用途が見出される可能性もあります。そのような化合物を見つけることができれば望外の喜びです。金属錯体とは、中心に金属(主に遷移金属)イオンがあり、その周囲を配位子と呼ばれる原子団が取り囲んだ構造をもつ化合物を指します。私たちの研究室では様々な金属と配位子の組み合わせの中から、例えば非常に大きな空隙をもち巨大な分子をその中にいれることができるような金属錯体を合成し、その物性を調べることを目的に研究を行っています。これまでに知られている配位子の種類は数多く、金属の種類もたくさんあります。従って、その組み合わせの数はさらに膨大になります。その中から、希望する性質を示す化合物を合成するには、何らかの指針が必要です。そこで、新規な金属錯体をいろいろ合成していくことにより、指針を作り上げていくための礎になることを目指しています。無限の可能性の中から、       一粒の宝石を求めて金属微粒子を利用した、農薬成分の検出例。一目で成分の有無がわかる簡便な方法だが、その反応は非常に複雑。基礎研究を通じた機構解析も重要なミッションである。電気化学発光検出システム。新しい検出システムの製作は作り出す楽しみだけではなく、その機構を理解する楽しみを生み出す。研究室の「小さな社会」として、報告・連絡・相談がスムーズに行える環境を大切にしています。研究活動を通じて得た多角的に考える習慣は、問題解決に意欲的な研究者・技術者として活躍してほしいと思います。信州大学大学院物質創成科学 博士課程を修了。学外で勤務した後、2015年 信州大学先鋭領域融合研究群環境・エネルギー材料科学研究所 助教を経て、2017年から現職。髙橋 史樹 助教電気化学測定は、物質の状態と関係する電位と、物質の量と関係する電流との関係から、目的の成分を定性的・定量的に測定する方法です。様々な化学物質や病理診断などへの応用が期待されていますが、ここに発光のパラメータを導入することで、より選択的・感度の高い検出法としての利用に展開しています。私たちの研究室では、その反応機構を理解するための基礎的な知見を得るとともに、微量物質の検出や予防医療などへの適用に役立てたいと考えています。髙橋 研究室近年、分析機器の飛躍的な性能の向上に伴って、機器分析を用いた超高感度の有機・無機化合物の検出が可能になっています。しかし、分析したい試料の中には、研究室などへの移動中に分解したり、移動自体が難しい試料に直面することもあります。そのような時は、試料を採取する段階で必要な検査を行う必要があります。本研究室では、検出装置の小型化が期待できる電気化学分析について、医薬品成分などの検出に向けた基礎的な知見の取得を試みています。特に、電極反応に伴って光る現象として知られている、電気化学発光について分析化学的な研究を行っています。また、農薬成分の分析に向けた金属ナノ粒子による呈色試験法の開発についても研究対象としています。試料中の微量の薬物・農薬成分の          可視化を目指す農薬成分なし試料中の農薬成分を検出農薬成分ありCoCOH2O

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