理学部研究紹介2019
18/40

14理学科理学科化学コース化学コース研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像電気化学測定装置。電極電位を制御しつつ、回路を流れる電流を記録できる。液状炭素電極。Aは炭素滴が毛細管から離れる直前、 Bは離れた直後。京都大学農学部卒。2001~2008年まで福井県立大学生物資源学部助手。2008年から信州大学に勤務。専門は電気分析化学。担当授業は分析化学、生物化学など。巽 広輔 教授高校の理科教員のほか、電気化学測定の経験を活かして金属の腐食・防食やメッキの研究をしている卒業生、環境水、工業廃水等の分析をしている卒業生がいます。固体電極は、測定で表面が汚れるたびに磨かなければなりませんが、液状の電極はつねに新しい表面を出しながら測定できる、という利点があります。昔から、水銀を滴下させる電極がよく使われてきましたが、近年はその毒性のために用いられません。私たちの研究が進めば、電極表面を新しくしながら測定する方法が、水銀を使わなくてもできるようになります。巽 研究室電気化学は、電解質を含む溶液に、金属など電気を通す物質でできた電極を入れたときに起こる反応について研究する学問分野です。さまざまな電極と溶液を組み合わせて電気回路を作り、電圧や電流を測定すると、電極の表面の状態や、溶液に何が入っているのか、といったことがわかります。私たちの研究室では、液状の電極を使って電気化学測定を行なっています。主に、黒鉛の粉末を油に溶いて液状にしたものを用いていますが、銀などの金属粉末を油に溶いたものや、金属粉末を砂時計のように流しながら測定する方法についても研究しています。液状の電極を用いる電気化学測定電気化学発光(ECL)による食品の抗酸化能(ROSの消去能力)評価法の開発の開発(地元企業 八光電機株式会社との共同研究プロジェクト)金ナノ粒子/導電性高分子複合材料による超微小電気化学センサーの開発とROSの局所センシング技術の確立1993年3月名古屋大学工学研究科工業分析化学専攻 博士後期課程修了、博士(工学)。岐阜大学工学部助手、岐阜大学機器分析センター准教授を経て、2010年より現職。金 継業 教授金 研究室近年、金研究室の卒業生のうちの半数以上は大学院に進学しています。卒業生は化学・材料系をはじめ、自動車、エレクトロニックスなど幅広い分野で研究者・技術者として活躍しています。その他、教員や公務員になる学生もいます。O2・-を直接検出できたことは、光触媒反応のメカニズム解明に役立ち、活性、抗菌作用の評価、また高活性光触媒の構築において重要な指針となります。近年、ROSは様々の病気の引き金になる原因の一つとしてクローズアップされ、医学分野で広く研究が行われてきました。金研は、信州大学次世代医療研究センター(http://shinshu-ngm.jp/)の共同研究にも加わっており、 ROSの生成抑制や消去作用の基礎研究は、新規薬物療法や新しい予防法の開発、健康維持のための応用研究につながることを期待しています。活性酸素(Reactive Oxygen Species、ROS)は、酸素分子が化学的に活性に変化した化学種の総称であり、金研究室は、ROS の生成反応に関する基礎研究を行っており、電気化学的、分光的な手法を駆使して、短寿命で、極微量のROSを高感度かつ高選択的に検出するための電気化学センサーの開発に取り組んでいます。これまで、タンパクと機能性ナノ材料をハイブリット化した第三世代の電気化学バイオセンサーの開発に成功し、光触媒反応や超音波照射によるROSの生成メカニズムの解明に用いられています。一方、ROSの発生を抑える作用のことを、抗酸化作用と呼んでいます。ROSにより引き起こされる疾病、老化にかかわる反応を理解し、生体中の抗酸化能の評価及び生理的役割を明らかにするために、電気化学発光(ECL)技術による抗酸化能の計測、とりわけROSに対する消去能を評価できる新しい分析方法論確立に挑戦しています。食品、医療分野における活性酸素種を   検出のための電気化学センサー超微小電極の先端

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る