理学部研究紹介2019
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13理学科物理学コース研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像理学科物理学コーステラヘルツ波を制御する人工構造物(メタマテリアル)。数ミクロンの微細加工を行い、メタマテリアルを作製する。テラヘルツ分光装置を構築している様子。自分たちで測定装置を構築する。主な研究分野:テラヘルツ電磁波工学。人工構造物を用いた電磁波の制御素子に関する研究。キーワード:テラヘルツ波メタマテリアル宮丸 文章 教授本研究室では、レーザーを用いた光学系を構築し、それらをコンピュータ制御するプログラムを作成するなど、測定装置を自ら作製します。それらの基盤的な技術を身に着けた学生は、光学機器メーカーや電気・精密機器メーカーなどで、研究開発業務に従事することが多いです。テラヘルツ電磁波は他の電磁波には無い光学特性があり、それを利用した応用技術というものが考えられてきています。たとえば、可視光とは異なり、紙や陶器などの物質を素通りします。一方、薬品やプラスチックなどにはある特異な吸収特性を示します。このようなテラヘルツ電磁波の特性は、さまざまな産業分野へ応用されていくと考えられます。光物性研究室テラヘルツ波と電磁波領域を制御する研究を行っています。テラヘルツ波とは電磁波のある周波数領域です。この周波数領域は、これまで研究開発が立ち遅れていました。なぜなら、十分に強い光源を得るのが難しかったからです。しかし、ここ十数年の間にテラヘルツ技術は急速に発展し、いまや産業応用へ向かいつつあります。本研究室では、テラヘルツ波を制御する新しい光学素子の研究を行っています。特に、メタマテリアルと呼ばれる人工構造物を作製することによって、これまでになかった光学特性を持つ光学素子を実現する研究を行っています。テラヘルツ電磁波を制御する磁性物理学分野磁性体を特殊な環境(低温・高圧)で測定するには、精密な技術が必要となる。根気と集中力が試されるが、成功した時の喜びも大きい。測定用サンプルも研究室で作製する。塩の結晶を作るのと同じ要領で、金属を1000℃以上の高温の状態から徐々に冷やしていくと綺麗な結晶が得られる。1999年大阪大学修士課程修了後、金属メーカーにて磁気ヘッド開発に携わるが研究者を目指し大学院へ。2003年博士号取得後、研究員を経て2005年から信州大学理学部准教授中島 美帆 准教授物質研究のスキルと、物性物理の知識が役立つ企業(素材・電気・電子部品・自動車関連など)に就職する人が多いようです。システム関係や、教員・公務員など、さらに幅広い物理学が強みとなる進路を選ぶ人もいます。自然の仕組みを理解するのが科学であり、その仕組みを再現するのが技術です。人類は長い時間をかけて磁性を研究してきましたが、完全に解明されてはいません。多数の電子が作り出す世界は複雑で、だからこそ面白いのですが、科学により絡まった糸が解きほぐされ美しい姿が現れれば、自由自在に原子を組み合わせて新物質を作りだす技術が実現する未来が来るかも知れません。実験的に磁性の研究を行っています。磁性の主役である電子は、物質中に多く含まれているので、その働きは単純ではなく、物質ごとに多種多様な顔を見せます。さらに電子は熱や電気伝導の担い手でもあるので、思わぬ影響もあります。例えば、電気抵抗がゼロとなる超伝導現象は、磁性体では起こらないとされていましたが、極低温や高圧など特殊な環境下で超伝導を示す磁性体が新たに発見され、磁性と超伝導との関係が注目を集めています。このように1つのことに対する研究が、他の分野の新しい謎をよぶ、実験にはそんな面白さがあります。磁性と超伝導の謎にせまる

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