理学部研究紹介2019
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11理学科物理学コース研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像理学科物理学コースとりまく環境(温度、電場、磁場、圧力)によってモノの性質は大きく変化する。上図は、磁場によってシリコンが半導体から金属に変化することを示している。極低温にすると、多くのモノが超伝導現象を示す。超伝導状態では、電気抵抗ゼロ、および磁場を完全に排除する(完全反磁性)という普遍的な性質を示す。物性理論研究室1987年 早稲田大学卒業、 1995年 新潟大学大学院博士課程修了 博士(理学)、 1995-1997年 日本原子力研究所、 1997-2002年 東北大学大学院理学研究科、 2002年-現在 信州大学理学部樋口 雅彦 教授卒業生は、物理学の知識を生かして様々な分野で活躍しています。例を挙げますと、企業(電気、機械、ソフトウエア関連など)への就職、公務員、公的研究所の研究員、高専の教員、小学校・中学校・高校の教員。研究対象のモノとして、アミノ酸、たんぱく質、DNAなどの生体物質も扱われ始めました。これら生体物質の性質を解き明かすことで、生命現象の不思議に迫れるかもしれません。また、モノをとりまく環境(温度、電場、磁場、圧力)を制御することにより、モノの性質を積極的にデザインすることも可能です。さらには自然界にない新奇な機能をもった人工物質の創製も始まっています。これらは、半導体がかつてそうであったように、未来の生活を豊かにする技術の種になるかもしれません。われわれの身の回りにあるモノには様々な性質があります。金属を例に考えて見ましょう。金属は、 ・電気を良く通します(電気的性質)。 ・表面に光沢があります(光学的性質)。 ・力を加えると延びるという性質があります(力学的性質)。 ・熱を加えると固体→液体→気体と変化します(熱力学的性質)。これら性質は、定量的な差はあるものの、多くの金属に共通してあるものです。このことを普遍性があるといいます。金属に限らず、われわれの身の回りにあるモノの性質には様々な普遍性があります。この普遍性はどこから来るのでしょうか。普遍性があるがゆえの共通のカラクリがあるはずです。私は日夜、モノの性質を決めているカラクリを解き明かそうと奮闘しています。モノの性質を理論的に解明するメキシコに新しく設置した検出器。宇宙線観測実験は国際共同研究として行われている。4カ国の観測所と観測装置(拡張を計画中)。GMDN(Global Muon Detector Network)と呼んでいる。しっかり学べば、大学で学んだこと、経験したことはどの分野であれ活かすことができます。自分自身の未来を拓きましょう。国際宇宙ステーション(ISS)が軌道上にあり、火星探査などという話も聞こえてくる時代です。人類が惑星間空間を航行する日が来たとき、その場所の状態がどうなっているのかを知っておくことはとても重要です。ISSでは、太陽からの宇宙線が大量に降り注ぐような時は、遮蔽された部屋に避難します。もし、宇宙天気予報が実現すれば、宇宙での活動にも貢献できるかもしれません。研究分野:宇宙線物理、宇宙プラズマ物理の分野で、宇宙線の加速や伝播モデルについて研究。加藤 千尋 教授宇宙線実験研究室太陽の活動は地球に様々な影響を与えています。例えば、フレアーやCME(Coronal Mass Ejection)と呼ばれる太陽表面での爆発現象は惑星間空間の磁場を乱し、衝撃波を生みだします。この擾乱や衝撃波が地球にぶつかると地磁気嵐やオーロラ発光などの現象を引き起こします。このように地上で様々な現象を引き起こす惑星間空間の現象を“宇宙天気”と呼んでいます。研究室では、日本、オーストラリア、ブラジルそしてクウェートに観測所を設置し、ほぼ全天を同時観測できる宇宙線望遠鏡を使って宇宙天気現象の解析とその理解を進めています。宇宙線望遠鏡で視るモノをどんどん冷やして、極低温にすると超伝導現象電気抵抗ゼロ完全反磁性

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