理学部研究紹介2019
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7数学科研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像数学科自然情報学コース自然情報学コースRabi モデルと呼ばれるシンプルな模型のスペクトルの様子。数値計算で結果を予想することができる。しかし数学な証明が与えられない限り、その現象が理解されたとはいえない。黒板の前で議論を行いながら研究を進めることもある。これまでの卒業生の主な進路は情報関連企業、公務員、数学の教員、金融です。勉強・研究で身につけた数学的知識、論理的能力を各分野で生かしてください。さらに研究を続けて研究者を目指すこともできます。ポアンカレが「科学の価値」の序文で「真理の探求—これがわれわれの行動の目標でなければならない」と述べているように、数理物理学の目標も真理の探求です。自然科学の基礎的法則と現象の間に隠れている数学的構造を解き明かす事が目標です。いくつか問題は真に独創的で美しい方法で数学的に証明されました。問題が解決すると次の新しい問題が生じます。未来の人も我々と同じように難問に頭を悩ませているでしょう。北海道大学大学院理学研究院にて博士(理学)を取得。日本学術振興会特別研究員を経て 2009 年から信州大学にて助教、 2014年から現職。専門は数理物理、作用素論、量子系のスペクトル解析。佐々木 格 准教授佐々木 格 研究室量子力学の数学的基礎は 1932 年にフォン・ノイマンによって与えられました。1951年の論文で加藤敏夫によって原子系のハミルトニアンの自己共役性が証明され、原子・分子からなる量子系の数学的に厳密な取り扱いが可能になりました。さらに電子・原子核と量子電磁場との相互作用を加えることで、より精密な物理モデルとなります。量子電磁場のような無限自由度を持つ量子系の解析には、赤外・紫外発散と呼ばれる特有の困難があり、これを解析する方法がいくつか見つかっていますが、完全な理解には至っていません。少しでも無限自由度の量子系の理解を深められるように日々研究しています。無限自由度の量子系の数学的解析Black-Scholes の株価変動モデル確率微分方程式確率熱伝導方程式旧10マルク紙幣(中心極限定理に現れた正規分布とガウス(1777-1855))学歴:2008 年3月、東京大学大学院数理科学研究科 博士後期課程修了職歴:2014 年4月、信州大学学術研究院(理学系)准教授(現在に至る) 研究分野:確率論、確率解析謝 賓 准教授確率論や確率過程論に関する基礎知識を身につけて、現実社会の問題へ応用できれば嬉しく思います。卒業生・修了生には学んだ知識を生かして、保険会社、銀行、証券会社で活躍しているものが何人もいます。また、中学校や高等学校などに就職した卒業生もいます。確率微分方程式および確率偏微分方程式は統計物理学、場の量子論、集団遺伝学、工学などの自然科学の諸領域において重要な役割を果たしています。さらに、自然科学のみにとどまらず、金融、ファイナンス、保険学などの分野においてさえも、その有用性はよく知られています。例えば、近年ファイナンス(企業金融)と数学の融合した数理ファイナンスには確率微分方程式の理論が必要不可欠です。謝 賓 研究室確率解析、特に確率微分方程式と確率偏微分方程式を中心に研究を行っています。確率論とは世の中にでたらめに起こる現象に潜んでいる一定の規則性を見出しそれを解析するための数学です。例えば、大数の法則や中心極限定理は有名な規則性として知られています。確率(偏)微分方程式は、(偏)微分方程式に時間の変化とともに独立に外部から入ってくるランダムな要素を付け加えて得られる方程式です。このような方程式について、解の存在やその一意性といった基本的な問題をはじめ、エルゴード性、安定性および爆発問題などの長時間の振る舞いに取り組んでいます。ランダムな現象の解析見本SAMPLE

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