信大医学部医学科研究紹介2019(日本語)
9/48

7基礎的な研究を積み重ねて、神経の機能維持や機能回復を目指す人体構造学教室では、神経系の構造や機能の解明を目指して、中枢神経(脳・脊髄)や末梢神経(脳神経・脊髄神経)を対象に研究を行っています。様々な神経系について、正常な運動機能や感覚機能を維持するためには実際にどのくらいの神経細胞が必要なのか、また、どのくらいの神経線維が必要なのか、組織化学的な手法を用いて明らかにするとともに、神経損傷後の神経再生を促進させることによって機能の回復を促す研究を行っています。また一方で、医学科の教育として人体の解剖学実習を担当しており、肉眼解剖学的な研究も行っています。・脳内伝導路の再生と機能回復・末梢神経の再生と機能回復・神経機能とニューロン数の相関・ステレオロジーによるニューロン数の定量解析近年、病気や外傷による神経損傷の治療法として神経再生医療が注目されています。機能を維持するためにはどのくらいの神経細胞・神経線維が必要なのか、機能を回復するためにはどのくらいの神経細胞・神経線維を再生する必要があるのかを明らかにすることはとても重要です。基礎的な研究を進めることが、医療の発展につながります。人体構造学教室では、それぞれの研究対象についてマクロからミクロまで研究を展開しています。研究を通して幅広い知識と問題解決能力が身に付き、様々な分野で活躍できます。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像人体構造学(教授 福島菜奈恵)ラット脳内嗅覚伝導路(左上)投射ニューロン(左下)髄鞘の免疫染色(右)電顕像ラット下肢筋の神経筋接合部(左)神経終末(中央)アセチルコリン受容体(右)合成像“人は血管と共に老いる”動脈硬化性疾患の予知と予防に向けて血管内皮細胞を中心とした血管機能の調節メカニズムを解析することにより、循環器系の生理的、病態生理的な機能調節とその破綻のメカニズムを明らかにすることを目指しています。それを解決するきっかけとして、超悪玉コレステロール酸化LDLの受容体LOX-1を見つけました。この研究を広げ、加齢に伴う生体制御機構破綻のメカニズムとその本来の役割を明らかにし、さらには、その知見を応用した、新しい診断、予防、治療手段の開発までたどり着くのが目標です。・LOX-1遺伝子ファミリーの生物学的意義の解明・LOX-1ブロッカーの探索とその治療への応用・LOX-1を用いた診断技術の開発、臨床応用・老化と加齢性疾患の病態メカニズムの解明基礎研究は、それ自体が一種の目的であり、自然の仕組みを明らかにすることそのものに意義があります。しかし、それだけでなく、実際に世の中の役に立つことも同じくらい重要です。幸いにも私達の研究は、動脈硬化に関連した病気の診断や治療に、実際に役に立てる可能性が出てきました。つまり、血管のアンチエイジングから、健康長寿に近づくことを実現しつつあります。研究に参加しその経験を生かすことによって、新たな医学知識を生み出します。そして、その知識を新しい治療薬や診断薬のような形のあるものにして、実際に医療の中で使われるようにし、医療の世界を変えていくことに貢献できるようになります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像分子病態学(教授 沢村達也)LOX-1は動脈硬化性疾患の各段階を進展させる医学生の研究室での実習では、短い期間ですが、とても面白い成果が得られました!

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る