信大医学部医学科研究紹介2019(日本語)
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33機能脳神経外科は、脳神経外科医による脳科学の応用分野です機能的脳神経外科 班(チーフ:講師 荻原利浩)脳神経外科学脳組織は部分ごとに機能が決まっています。病気によって機能が障害された場合、その病気を治すことはもちろん重要ですが、それ以外に、障害された機能を回復させたり、機能を温存したりする技術が必要で、そのような分野が機能脳神経外科です。パーキンソン病は神経難病の一つで薬物療法が主な治療法ですが、脳の深部に電極を埋め込んで刺激をすると、より楽に生活できるようになる患者さんがいます。てんかんも薬物療法が主な治療法ですが、てんかんを起こす焦点を同定し、その部分を切除することで発作を抑えることができる患者さんがいます。・不随意運動、寡動・神経疼痛、痙性麻痺・てんかん・三叉神経痛、片側性顔面けいれん神経の機能は脳波や筋電図を使って解析することで病気を判断することが多く、このため生理学や電気に対する知識が必要です。臨床研究も動物実験もこれら知識を統合して行われます。機能脳神経外科は最も脳科学に近い分野です。脳科学の発展のためには、人間の脳の機能(電気活動)をできるだけ詳しく知ることが重要です。人間の脳を直接治療できるのは脳神経外科だけです。医学部卒業後、2年間の臨床研修プログラム終了後、脳神経外科を選択します。4年間の後期臨床研修プログラム終了後、脳神経外科専門医を取得します。その後自身のサブスペシャリティとして機能脳神経外科を選択します。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像脳深部刺激術のシェーマ。脳内の電極に持続電気刺激を行う(メドトロニック株式会社提供)運動誘発電位脳表に電極を設置し(左)、運動野を刺激することで筋を動かす運動誘発電位(右上段)と手足に電気刺激を与え、その信号が脳に伝わることを記録する感覚誘発電位(右下段)を記録感覚誘発電位脳深部電極設置術中の写真。頭蓋に小孔をあけ、深部電極を脳内に穿刺挿入する脳表電極手術用顕微鏡を使用した安全で、低侵襲な脊髄手術で、出来る限り早く日常生活に戻れるようにつとめています低侵襲脊椎脊髄 班(チーフ:講師 伊東清志)脳神経外科学低侵襲脊椎脊髄班は、背骨とその中にある神経(脊椎脊髄神経)の病気を研究し治療するチームです。脊骨や脊椎脊髄神経を障害し、手の痺れ・痛み、運動麻痺、歩行障害、下肢痛などの原因になりうる病気を、手術用顕微鏡を使用して、【安全】かつ【低侵襲】な手術を実施し、出来る限り早く日常生活に戻れるようにつとめています。特に、脊髄にできる腫瘍の治療に力を入れています。・ 頚椎症、腰部脊柱管狭窄症などの頚や腰の病気に対する低侵襲で安全な手術方法の工夫・脊髄腫瘍に対する安全な手術方法の改良と開発・手術の時に使用する器具の改良と開発いままでの背骨(頚椎、胸椎、腰椎)の手術は、肉眼で行われることが多く、手術成績は必ずしもよくありませんでした。「脊椎や脊髄の手術をうけると、術後寝たきりになる。だから手術は受けない」というお話をよく聞きます。それは違います。手術用の顕微鏡を使って非常に丁寧な手術をすれば、いままで悩んでいた手や足の「しびれ」や「痛み」から解放されます。私たちは、手術の方法や手術に使う器具を改良する研究を行い、治療成績をさらに改善しようと日々努力しています。卒業後は、脳の手術の研修とともに、頚髄、胸髄、腰髄、末梢神経(正中神経、尺骨神経など)の疾患の治療、研究にあたります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像【脊髄の裏側にある腫瘍をとる実際の手術写真】手術用顕微鏡で観察しているので大きく見えるが、実際の脊髄の幅は、狭いところで8㎜くらいしかなく非常に繊細なテクニックが要求される【サージカルボディーサポート】いままで不安定であった立位での手術が、我々が開発したこの器具により、体が安定し、より安全に行うことが可能となった

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