信大医学部医学科研究紹介2019(日本語)
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26手術から遺伝子まで― 新たな癌治療への挑戦 ―消化管 班(チーフ:助教 宮川雄輔)外科学 消化器外科部門食道癌、胃癌、大腸癌治療を中心に診療を行っています。治療の基本は手術による切除であり、低侵襲性、根治性、安全性をさらに追求した質の高い手術、周術期管理の改善に日々取り組んでいます。一方、臨床に直結した基礎研究にも力を入れております。フローサイトメーターや最新の細胞イメージング機器Operettaを駆使し、大腸がんのドライバー遺伝子変異であるRASやBRAF遺伝子変異、スキルス胃癌のRhoA遺伝子変異を標的とした新たな治療の開発を目的として研究を進めています。・ 食道癌手手術の術中モニタリングによる反回神経損傷予防、再建腸管血流の定量化による縫合不全予防・ 大腸がん、胃がんの個別化治療に対応したin vitro assayの確立・ スキルス胃癌における変異型RHOAの機能解析我々の研究手法はフローサイトメーターや細胞イメージング機器(Operetta)を用いるため、多数の遺伝子変異に対して、その機能解析や薬剤耐性を短時間で正確に評価可能である。それらの結果を解析し、大腸がんや胃がんの新たな治療法を開発したいと考えている。癌の幅広い基礎知識や最新の機器を用いた研究手法を学ぶことが出来るため、癌の研究や臨床に携わる仕事に就く場合は、本研究で得た知識・技術が非常に役に立つと考えている。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像遺伝子変異はがんの悪性度を高くするが、同時に治療標的になる可能性もありRAS左図 フローサイトメーター(BD FACS CantⅡ)を用いて、より客観性 の高い、安定した結果を得ることが可能右図 遺伝子変異がん細胞をフローサイトメーターで測定肝移植周術期・長期経過の問題探求と膵島細胞移植の推進移植・小児 班(チーフ:講師 三田篤義)外科学 消化器外科部門・ 当科の肝移植の歴史は、1990年の本邦3例目の生体肝移植移植に端を発しており、以来300症例以上の肝移植を施行し、術後20年以上経過した症例を経験しています。移植後には肝移植後拒絶反応、感染症のみならず、妊娠・出産を経験されたり、癌を発病された方もおり、今もなお術後管理には解決すべき問題があります。・ 膵島移植については、2013年に日本膵・膵島移植研究会より膵島分離・移植施設として認定され、その後「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づいた第1種再生医療等として承認されて、膵島分離・移植実施体制を整えています。・周術期を含めた肝移植患者管理における諸問題の解決・ヒト膵島分離・移植の実施に向けたシミュレーション・膵島保護作用の研究肝移植領域においては、20年を超す長期生存患者を得ており、その経験をもとにさらに長期生存を目指すとともに、新規肝移植症例での問題解決に活かします。膵島移植領域においては、国内の他の認定施設とともに、本邦においては比較的新しい治療法である膵島移植療法の確立につとめます。移植治療に不可欠である免疫抑制療法、細胞保護などの知見を深め、移植患者の周術期管理、長期管理に精通し、移植外科医として移植医療を担います。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像    信州大学における累積生存率を示す    (最近7年間の39症例における粗生存率は95%であった)膵島移植に用いる膵島ドナー膵臓から分離・純化した膵島(赤く染色された細胞)をレシピエントの門脈に移植する

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