信大医学部医学科研究紹介2019(日本語)
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8シナプスで働く遺伝子を研究し、精神疾患の原因解明、治療法の開発を目指します私たちの研究室では、脳の神経と神経の繋ぎめであるシナプスの形成や機能を司る遺伝子についての研究をしています。シナプスは、近年精神疾患の原因となる部位と考えられるようになってきています。シナプスで働く遺伝子を改変したマウスを作って、マウスの脳機能を調べることで、それらの遺伝子がどのような働きをしているのか、さらには精神疾患がどのようにして引き起こされるのかを解明します。このような研究によって、精神疾患の新しい治療法が開発されることに繋がります。・遺伝子改変精神疾患モデルマウスのシナプス機能の解析・シナプス形成因子がシナプスの機能を司るメカニズムの解明・神経細胞でのゲノム編集技術の開発・精神疾患の原因が解明される可能性があります。・シナプスを標的とした精神疾患の新しい薬の開発につながります。・精神疾患の遺伝子治療ができるようになるかもしれません。・医学研究者になることを目指します。・海外に留学して世界の研究者と同じ土俵で仕事をします。・大学の教員になります。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像分子細胞生理学(教授 田渕克彦)シナプス形成因子ニューレキシンの遺伝子をマウスの小脳で働かなくすると(TKO)、小脳の形成不全が起きて小脳が小さくなるマウスの神経細胞に遺伝子を導入している様子蛍光を発する遺伝子が導入されたマウス大脳皮質の神経細胞筋肉イオンチャネルの研究私たちの教室では、心筋・血管平滑筋・骨格筋の研究を行っています。これらの筋肉を構成する細胞は、脂質二重層からなる細胞膜により取り囲まれています。細胞膜は脂溶性なので、細胞内外のNa+やCa2+などのイオンが透過できませんが、細胞膜にはイオンチャネルという蛋白質があり、これを介してイオンは細胞内外を行き来します。これが、細胞内の電気的・化学的反応を引き起こして、筋収縮を調整します。私たちの教室では、イオンチャネルとイオンチャネルに作用する薬物の研究を通して、様々な病気の治療法を研究しています。・心不全におけるL 型Ca2+チャネルの機能的変化に関する研究・ 幼若心筋細胞におけるアンジオテンシンII の強心作用の分子機序の研究・ 動脈硬化における血管平滑筋細胞のL型Ca2+チャネルの機能修飾の研究・骨格筋L型Ca2+チャネルの細胞内局在の分子メカニズムの研究筋肉のイオンチャネルの異常は、不整脈・心不全・急性心筋梗塞などの循環器疾患のほか、高齢者のサルコペニア(筋力低下)・筋麻痺・悪性高体温症などの骨格筋の病気も引き起こします。幸い、現在臨床使用されている薬の中にも、これらのイオンチャネルに作用する薬が多く存在するので、私たちはこれらの薬を用いた、筋肉疾患の新しい治療法の開発を目指しています。全身の細胞にイオンチャネルは存在するので、イオンチャネルの知識は、卒業後どこにおいても、病気の理解や、治療法の開発に役立ちます。また希望者には、欧米のラボを留学先として紹介することが可能です。主な研究テーマ研究から広がる未来卒業後の未来像分子薬理学(教授 山田充彦)幼若心筋細胞特異的な、新しい心収縮増強メカニズムL型Ca2+チャネル阻害による動脈硬化血管平滑筋細胞の遊走の抑制ジャンクトフィリンによる筋力調節

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