2019環境報告書
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30修士論文修士論文総合理工学研究科 工学専攻 機械システム工学分野 松本 雄大総合理工学研究科 工学専攻 水環境・土木工学分野 松木 達 太陽エネルギーの多目的活用に 関する多層フィルム構造の最適設計太陽光に含まれる紫外線や赤外線を反射できるLow-e金属膜のように、光スペクトル制御ができる光学フィルムが多くの分野で応用されている。本研究は、集光タワーと反射装置のヘリオスタットで構成されるタワー集光型太陽熱発電と、太陽光発電のハイブリッド化について新たに提案した(1)。太陽熱発電と太陽光発電は、それぞれ異なる波長域を利用する。そのため、指定波長域において透過と反射の機能を実現できる多層フィルムの構造最適化を行った。光の干渉条件より斜入射光の高反射条件式を導出し、特定入射角光に対して目標とする分光特性を満たす多層フィルム構造に対する分光特性解析の定式化を行った。これらの多層構造を積層することで、広い範囲の入射角に対応できる超多層構造の最適値を得た。この構造では太陽熱発電に利用する長波長側波長は、ほぼ100%反射できることが確認された。同時に、太陽光発電に利用する短波長側波長は約65%透過できることがわかった。これは、太陽熱発電に関しては従来通りの光量が得られ、同時に太陽光発電の光量が付加されていることを意味している。太陽熱発電と太陽光発電のハイブリッド化が実現できると考えられ、太陽エネルギー利用の多様化に寄与できる。(1)松本雄大, 中村正行, 藤井雅留太, “多層フィルム構造の最適化による太陽熱および太陽光利用のハイブリッド化に関する検討”, 日本機械学会第28回設計工学・システム部門講演会講演論文集, No. 18-11 (2018), 3304(1)–(6). シリコーン膜の多孔質構造が インク廃液の膜ろ過に与える影響塗料、接着剤、インク等には溶剤として有機溶媒が多く使用されている。これらが環境中に排出されると人体への被害のみならず、大気や水、土壌汚染などの環境負荷をあたえることから、分離・回収が必要である。本研究では、低圧で廃液中の有機溶媒を回収のための膜分離プロセスの開発を目的とし、数種の孔形成剤を利用して多孔質シリコーン膜を作製し、これらを用いて有機溶媒を含む種々のインク廃液から有機溶媒の回収を試みた。図1は、孔形成剤としてプロピレングリコールを用いて作製したシリコーン膜の断面画像である。膜の一方(上部)に数10µmのち密層を有し、他方が多孔質な非対称膜を作製することができた。図2に膜ろ過装置の概略図と、使用した3種の廃液およびこれらの廃液をろ過した後に得られた透過液の外観を示した。測定は、上下2つのセルの間に作製した非対称シリコーン膜を配置した後、その上に着色した赤、青および白色インク廃液を置き、これに0.2 MPa程度の圧力をかけた。その結果、いずれの廃液からも、若干着色はあるもののほぼ透明な有機溶媒を回収できることが確認された。修士論文02環境への取り組み修士論文2-1 環境教育図2 超多層フィルムを貼付した太陽光   発電パネル付きヘリオスタット図1最適化された多層フィルムの分光特性の例図1 膜断面SEM画像図2 膜ろ過装置と3種の廃液のろ過測定結果太陽熱発電用の長波長域を反射し、太陽光発電用の短波長域を透過していることがわかる。波長域の分離は任意に設定できる。超多層フィルムにより、太陽光スペクトルのうち太陽熱発電用の近赤外線を反射させ、太陽光発電用波長を透過させることで両発電を両立する。

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