2019環境報告書
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15私は1996年に信州大学工学部物質工学科に入学、信州大学大学院工学研究科物質工学専攻を2002年卒業、株式会社トクヤマに入社、2006年に株式会社アストムに出向、現在イオン交換膜および電気透析の研究開発に従事しております。大学4年生の時に物質工学科武井研究室にて電気化学(卒論テーマ:鉛蓄電池)を学び、院生時代は田坂、清野研究室にてイオン交換膜を用いた透過現象の解析(修論テーマ:2種副イオン間の膜電位測定)を行いました。㈱トクヤマに入社してからもイオン交換膜に関わり、固体高分子型燃料電池の隔膜に関する研究開発に従事していました。当時、燃料電池の研究は非常に注目の分野で、イオン交換膜の研究から考えるとスポットライトが当たったようなイメージを持ったのを覚えています。その後、㈱トクヤマの関連会社である㈱アストムに出向し、あらためて既存のイオン交換膜の開発に取り組みました。イオン交換膜を作るという点では燃料電池の隔膜開発でも同じようなことをしており、すぐにバリバリできるものと考えておりましたが、蓋を開けてみると、イオン交換膜の使い方が異なり、まず使い方を理解することに随分苦労したのを記憶しています。イオン交換膜は、主に電気透析装置に使用しています。イオン交換膜には陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の2種類があり、電気透析装置ではこの陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に積層し、イオン交換膜に対して垂直方向に電気を流します。電気の力で水溶液中のイオンを移動させ、イオン交換膜を透過させて、イオンを濃縮分離する装置になります。主な用途としては製塩があり、日本国内の食塩のほとんどは、電気透析装置にて濃縮された海水を蒸発乾固して製造されています。その他に、食品用途では、醤油を脱塩し減塩醤油を作るプロセスや、ワインの澱の成分を脱塩し澱の少ないワインを作るプロセス、離島での地下水の脱塩による飲料水化プロセス、環境関係では、一般廃棄物最終処分場のゴミ浸出水の脱塩濃縮、工場での廃液、廃酸の回収、減容などがあります。現在は、新しいイオン交換膜の開発を行っており、評価手法や製法など様々な部分の開発に取り組んでおります。この開発には初期から携わっており、新しいコンセプトのイオン交換膜を開発、評価し、ユーザー提供、評価のフィードバックなどをしています。あとは上市を残すのみで、研究開発の醍醐味を経験しています。最後の上市の壁を突き抜けられるように日々奮闘しております。イオン交換膜開発の取り組み環境と生きる人づくり(OB・OGの環境活動)株式会社アストム 岸野 剛之さん岸野 剛之・きしのまさゆき2002年信州大学大学院工学研究科物質工学専攻修了2002年株式会社トクヤマ入社2006年株式会社アストム出向特 集

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