総合人間科学系研究紹介_2019-2020
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31総合人間科学系総合人間科学系基盤研究支援センター基盤研究支援センター研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像原発事故直後の農産物汚染状況現地調査(福島・北関東)。分析技術を応用して葉物野菜上の放射線分布を画像化(右下)し、事故後に発生した葉には汚染が殆ど付着していないことをいち早く示した。科学・技術分野では、分析対象がますますミクロ化していくことが予想されます。放射線は、素粒子レベルまで分析可能なツールです。将来、技術者・研究者を目指す方にとって、放射線は基礎的な知識のひとつになるかと思いますので、是非、興味を持ってください。近年、加速器(高エネルギー放射線を電気的に発生させる装置)や生体内RI分布3次元イメージング装置の導入、また、これに伴う新たな種類のRI使用が進むなど、これまでとは異なる形態の放射線利用が増加しつつあります。今後も安全に放射線を利用していくことが出来る様に、利用増加が見込まれるRIの環境中での挙動解明や新たな利用に対応した放射線計測装置の開発等に研究を広げて行きたいと考えています。廣田 昌大 助教2004年名古屋大学人間情報学研究科博士後期課程修了。日本原子力研究開発機構産学連携協力研究員、放射線医学総合研究所博士研究員、東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻特任助教を経て、2012年に着任。遺伝子実験支援部門RI実験支援部門自然科学の分野では、放射線は分析や解析のためのツールとして利用されています。病気の新しい治療・診断方法や新薬の開発、食品の安全性評価等に向けて、物質を構成する元素の一部を放射性同位元素(RI)に置き換え、それから放出される放射線を目印に生体内での物質の挙動を解明することもそのひとつです。信州大学では、この操作を行う施設として基盤研究支援センターRI実験施設が設置されており、私はそこで放射線取扱主任者として法定の管理業務を担当しています。また、自らもRIを用いた実験を行い、環境中のRIの挙動解明と、適切な管理方法の確立に取り組んでいます。実務と研究の両面から放射線にアプローチし、未来の放射線利用を考える特定の遺伝子の働きが活性化される培養条件の検討。細菌は外部環境の変化に応じて瞬時に遺伝子の働きを調節する能力を持っている。法政大学マイクロナノテクノロジー研究センター研究員、日本学術振興会特別研究員、信州大学ヒト環境科学研究支援センター助教を経て、2016年より現職。研究テーマは、細菌のバイオフィルム形成に関わる遺伝子発現ネットワークの解明。小笠原 寛 助教社会的ニーズの高いバイオテクノロジーの知識や技術を学べるので、就職先としては食品メーカーや製薬メーカー、その他バイオ系企業等が考えられます。これまでの卒業生は、食品メーカー、バイオ医薬品メーカー、澱粉メーカー、繊維メーカー、精密機器メーカー、土木建設・リサイクル関連会社等に就職しています。日々進歩する遺伝子解析技術により、今では有用菌から有害菌まで、多くの細菌種で全ゲノム配列が決定されています。その中には、私たちの生活を向上させるために役に立つ様々な情報が沢山含まれていますが、細菌はこれらすべての遺伝子機能を、いつも働かせている訳ではありません。細菌が状況に応じて遺伝子を働かせる仕組みを知ることで、個々の細菌の持つ能力を最大限に利用することも可能となります。肉眼では見えないミクロの世界で、単細胞の細菌はどのように生活しているのか―自然環境下で、多くの細菌は集団で生活し、その中でお互いにコミュニケーションを取り合っていることが分ってきました。当研究室ではプラスチックや金属など、固体表面に付着した細菌が増殖を始め、やがて多細胞生物のように集団化するまでの過程で、どの遺伝子をどのように働かせているのかについて研究を行っています。このように細菌が集団化する仕組みを理解することで将来的には工業や医療の分野で問題を引き起こす細菌たちを標的とした、薬剤の開発にも役立てたいと考えています。ミクロの世界の集団生活:ゲノム情報から見えてくる細菌の生存戦略とは?枯草菌の電子顕微鏡写真。多くの細菌は集団で生活している。ゲノム情報を基に、細菌の集団化に関わる遺伝子を詳細に解析放射線施設内において、放射性物質による汚染がないか検査している様子。原発事故直後の帰宅困難区域住民一時帰宅事業に実務経験者として他大学の教職員と参加した。

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