総合人間科学系研究紹介_2019-2020
32/40

27総合人間科学系総合人間科学系教職支援センター教職支援センター研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像大学卒業後に社会に出ると、年齢、性別、国籍、文化、価値観等々、自分とは異なる人とたくさん出会っていくと思います。自分の子どもを育てる親になる人も多いでしょう。授業では、学生の皆さんが多様な人と関わっていくとき、人を育てていくときに、ヒントとなる視点や基本的な知識などについて、少しでも頭の中の引き出しに残るようにお伝えしたり、一緒に考えたりできればと思っています。障害児に関する相談においては多領域に渡る知識や高度なスキルが求められます。また、相談における相談実践者の態度や姿勢も重要です。今後は、現場に出る前の養成段階において、必要となる知識、態度、スキルについて、どのように学び、身につけていくとよいのか検討したいと考えています。相談における3つのアプローチ。相談実践者はクライエントの状態 に応じてアプローチの比率を変化させて相談を進めていきます。東京学芸大学大学院教育学研究科(修士課程)、東京 学芸大学大学院連合学校教 育学研究科(博士課程)を 修了。博士(教育学)。2019年から信州大学教職支援センターに着任。枡 千晶 助教 教職支援センター教育心理学や発達心理学、教育相談といった人に関することを扱う授業を担当しています。研究のテーマは、障害や支援ニーズのある子どもに関する相談です。障害児に関する発達相談や教育相談は多領域の専門機関・専門職によって行われており、ニーズも高まっています。そのような状況を踏まえ、どの立場の相談実践者(相談をうける側。例:教員や心理職、ST、OT、PTなど)にも共通して求められる知識やスキル、態度があるのではないかという観点から研究を行っています。授業や研究を通してすべての人(多数派の人も、少数派の人も)が心身ともにいきいきと生きることができる社会を創っていくことがわたしの夢の一つです。誰もがいきいき生きる社会に向けて: 人の心や発達の支援について探究する「ホリスティックな教育」の人間観…アートの領域美的なものとのつながりグローバルなつながりエコロジカルなつながりいのちの次元とのつながり人間ホールネス(全体性)への広がりホーリネス(聖性)への深まりホリスティックな視点から人間を捉えることで、合理性・効率性・自律などの、近代的な価値だけに縛られない教育が見えてきます。「教育」に関わるのは教職に就く人だけではありません。私の授業では、今後、日常生活の様々な場面で出会うであろう、教える・学ぶ・伝える・伝わる・影響を受ける…などなど、広い意味での「教育」について、考えを深める場を提供できればと思っています。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了、同博士課程単位取得退学後、博士号取得(教育学)。千葉大学、東京学芸大学での非常勤講師を経て、2013年信州大学に着任。河野 桃子 講師教職支援センター「教育」は誰もが経験してきたものであるため、自分のこれまでの教育経験に囚われてしまい、柔軟に考えることが難しいテーマです。教職関係の授業では、グループワークや発表など、他の受講生の意見を聞きながら自分の考えを作っていく機会もたくさん用意されています。そのなかで多様な見方を取り入れながら、固定観念を問い直し、自身の教育観・教師観をより豊かなものにしていってほしいです。私たちが普段、当然のこととして素通りしてしまっている「教育」の仕組みや成り立ちについて、教育哲学・教育思想史という領域の手法で明らかにすることを目指しています。具体的には、19世紀から20世紀にかけてドイツ・スイスを中心に活躍した思想家ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner 1861-1925)の教育思想とそこから生まれた実践を手がかりに、人間を、社会的・文化的な水平方向のつながりや、いのちの次元・アートの領域などとの垂直方向のつながりのなかで捉える「ホリスティックな(全体的な)教育」について考えています。「教育」という営みを、より広く多角的に捉え直すシュタイナー教育については、日本語で読める著作もたくさん出版されています。シュタイナー教育では、特に児童期、芸術的な要素が重視されています。(上は教員による黒板絵)海外学会での発表 授業でのワークの様子

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る