総合人間科学系研究紹介_2019-2020
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5総合人間科学系総合人間科学系全学教育機構全学教育機構研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像x²+y²+z²=0で表されるA₁の特異点のイメージ自然科学教育部門筑波大学大学院博士課程数学研究科数学専攻修了。博士(理学)数学(特異点論、位相幾何学)片長 敦子 准教授「数学が世の中にどのように役に立っているのかわからない!」確かに算数ができれば日常は事足りているのかもしれません。しかし計算や論理だけではない「数学的な考え方」も授業で学び、皆さんの将来の大きな仕事や日常生活に役立ててもらえれば嬉しいです。「すべての現象は特異点の現れである。」とも言われています。特異点は、ブラックホール、光の屈折、台風の目、渦潮など自然界にあるものから私たちの持ち物に至るまで、とても身近に存在しています。数学では、より抽象的な空間を設定して特異点を研究します。100年くらい経ち、特異点の研究成果が自然界や世の中の特異点に応用されたとき、どのような未来が広がっているのか楽しみです。特異点は、他の点とは異なる特徴をもつ特異な点です。例えば、右の曲面の特異点はどこにあるでしょうか?すぐに特異点を見つけられたと思います。ではなぜ、すぐに見つけられたのでしょうか?それは、特異点が特異点を許容する空間の特徴や様々な現象の本質を凝縮して持つ点だからです。したがって、特異点を解明することは重要な研究課題になります。具体的には、複素数体上で定義された多項式に現れる高次元孤立特異点の幾何構造を、位相幾何学的な視点から研究を行っています。潰れてしまっている特異点ですが、その個性を捉えるために、特異点を解消して現れる図形や、特異点の周りを切り取って現れる図形の特徴に注目して調べています。特異点論、位相幾何学アルクビエレ計量から曲率テンソルを計算した用紙。ポアンカレの上半平面の測地線(半円)です。見た目は赤い線分ABが短いですが、実は弧AB(青)が短い。微分積分学の授業風景です。微分積分学と線形代数学は理工系分野の専門科目を受講、また研究する上で基礎となる科目です。東京理科大学理学部第一部数学科卒業。同大学院理学研究科修士課程修了後、同大学院博士課程修了(理学博士)。信州大学工学部助教授を経て、2006年全学教育機構に異動。高野 嘉寿彦 教授専門書以外の一般向け数学図書も沢山あります。是非、触れてみて下さい。数学の見方が変わります。数学的な論理思考を養うことは、社会人としての強みになります。各分野で活躍されることを期待します。紀元前300年頃に編纂された「ユークリッド原論」は、円等の図形に関する定理と、数に関する定理が数学的に厳密に書かれた書物です。公理系を変えることで新しい幾何ができ、一般相対性理論に応用されました。基礎的研究は、他分野へ応用されて発展するまでに長い時間がかかりますが、必要不可欠です。現在、応用として自己回帰過程のなす空間の幾何学的な性質等を研究しています。解析学的な研究は多数ありますが、幾何的研究により新たな発見があるかもしれません。自然科学教育部門     今から約2千5百年前のギリシャにおいて、相対性理論等の現代物理学の基礎となる重要な定理がピタゴラス学派によって発見されました。それは中学3年生で習うピタゴラスの定理または三平方の定理と言われる平面上の2点間の距離を測る物差(計量)です。この物差をもつ平面上の異なる2点を結ぶ最短線(測地線)は直線です。また、曲がり具合を表すものとして曲率があります。平面は曲がっていないので曲率は0です。対象と物差を変えて測地線や曲率等の幾何学的性質を研究(微分幾何学)しています。微分幾何学を用いて一般相対性理論が構築され、確率分布や時系列等にも応用されています。自然や社会のさまざまな現象を幾何学的に解析する

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