保健学科_研究紹介2019
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―7―何でだろう、どうしてだろうどうしたらもっと楽になれるだろう 昭和62年に信州大学に来てから、消化器外科、中でも肝臓移植の臨床を中心に研究してきました。大学生の頃、外科の大教授から「あと20~30年もするとおそらくガンに対する手術療法は減って、薬による治療に変わるだろう。そのあとに残る外科は、先天性の奇形、交通事故などによる外傷、そして臓器移植だ。」とおっしゃられたのを聞いて移植に興味は持ちましたが、信州大学に来て実際に肝臓移植に携わるようになるとは思いもよりませんでした。一方で、卒後30年経ちましたが、癌に対する最も効果的な治療法は相変わらず手術であり大教授の予想は外れました。患者さんの治療以外には、医療連携や患者相談、そして今は看護学生や看護師の教育にも携わったりしています。昭和53年上田高校卒業昭和59年東北大学卒業昭和59年岩手県立中央病院昭和62年信州大学外科市立大町総合病院、松代総合病院、国立長野病院勤務平成27年医学部保健学科 医療の分野では直接患者さんの病気の治療に役立つことから、広く地域の患者さん、世の中の人の健康に関することまで、それこそミクロからマクロまでいろいろなところで、様々な関わりを持つことができます。そんな中で、常に疑問を持つことを忘れず、そしてその解決法が何かないか考えていると、いつかその答えが得られると思います。 看護学専攻を卒業して、病院の看護師として、訪問看護師として、地域の保健師として働いていく中で、常に、どうしてだろう、どうしたらもっといいんだろうと、考えていると、今とは違う方法、もっといい方法が見つかると思います。成人看護学研究から広がる未来卒業後の未来像生体肝移植の一コマ。患者さんの肝臓は摘出し、提供者からもらっていた肝臓の動脈を顕微鏡を使って縫っている。グリーンリボンは世界的な移植医療のシンボル地域包括ケアシステムの概念を示す鉢植え出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」(地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業)、平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業、2016年池上 俊彦 教授看護学専攻成人・老年看護学領域看護の “what’s new and interesting” を探そう! 大学院では経済学の視点から看護ケアをどう評価するのか、という研究をしました。当時は看護が3K(危険・きつい・汚い)といわれていた時代でした。看護は病院に財をもたらす重要な資源として、その貢献度を試算し、数値で表すなど可視化することを考えました。教育の場では救命救急看護師の臨床実践力の獲得に関する研究、災害の急性期看護に従事した看護師のメンタルヘルスや災害教育に関する研究、潜在看護師育成に関する研究などをしました。今は看護学生がどう専門性を獲得していくのか授業を通し考えています。その中でシミュレーション教育の効果なども領域の教員や医学科の教員の力を借りながら検討をしています。2015年からは部局推進プロジェクトの支援を受け、新卒看護師のリアリティショックを緩和する目的で看護学専攻教員・附属病院看護師の連携で卒業間際の4年生希望者を対象に卒前教育を始めています。今後その効果についても検証が必要です。 病院看護師の頃、新しいシステム導入でどの位効率的になり、手術件数がどのくらい上がるのか試算し、可視化しました。今では、設備されている病院が多いですが、当事で二千万円のコンテナーシステム(手術器械を滅菌したまま長期間保管ができ、緊急時にも対応できる)を導入してもらえました。効率も上がり、看護にとって有用な結果となりました。諦めず継続することで研究が役立つ時が来ると思います。 未来の看護の3Kは「感謝」、「関心」、「共有」だそうです。常に世の中の状況にアンテナを高く張り、“What’s new?”、“What’s interest-ing?”と「関心」を持ち行動することが他者との「共有」を生み、いつか看護への「感謝」をもたらす大事なkey wordになると思います。成人看護学研究から広がる未来卒業後の未来像学内シミュレーション教育が附属病院災害訓練へ連動OSCE:一次救命処置医学教育センターとの協働シミュレーション教育卒前教育の様子2001年3月まで信州大学医学部附属病院看護師。同年4月から2010年3月まで新潟県立看護大学学生部長・教授(学部:成人看護学、大学院:看護管理学)。2010年4月より信州大学医学部保健学科教授。深澤 佳代子 教授看護学専攻成人・老年看護学領域

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