保健学科_研究紹介2019
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―27―理学療法学専攻高齢期の活動能力を維持するための プログラムを開発する 年を重ねてくると、健康で暮らすことは一層大切なこととなります。治療の必要なひとから地域で自立したひとまで、すべての高齢者にとって、身の回りのことを一人でできることは重要な意味を持ち、日常生活を実行できる能力に関連する要因は研究対象となります。専門は老年学。これまで高齢者の健康増進行動に対する「遂行感尺度」の開発、活動能力に影響する要因、転倒や運動機能低下を予防するための介入、転倒と関連する二重課題歩行能力の測定方法の開発とその介入を行ってきました。現在、長野県内の長寿地域で自立した高齢者に関連する生活習慣や心理社会的要因をフィールドワークを通じて明らかにしようと活動しています。 人は誰もが年をとります。高齢者の様々な側面を研究することは、自分の未来をよりよくするための活動につながると思います。健康状態と身体的・心理的・社会的要因との関連を詳らかにしてゆくことは、どのように人は変わってゆくのか、または変わることができるのかという道標を積み重ねることです。日本の高齢者は体力的に若返っているといいますが、その資源をどのように活用したらよいのか、地域とつながりながら考えてゆきたいと思います。 高齢者の特徴を理解して、課題を解決するための分析方法を身につけた医療・保健の専門家(理学療法士など)となってゆくことを期待しています。特に在宅で療養する高齢者、一次予防活動を必要とする高齢者に関わる能力を高めてもらいたいと思います。基礎理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像運動機能測定結果説明会1990年理学療法士免許取得後、市立大町総合病院に勤務。2000年3月信州大学大学院医学研究科博士課程修了。2003年から信州大学医学部保健学科に勤務、現職。横川 吉晴 准教授地域での運動教室指導二重課題歩行速度測定服薬前後での活動量計の経過を示したグラフ服薬後は歩数・運動エネルギー量とも増加している理学療法学専攻不治の病ではなくなりつつある医療の現実理学療法士のデータが求められている 私の専門領域は小児の理学療法です。臨床では神経難病(筋ジストロフィー等)など遺伝性の疾患を持つお子さんに関わることが多いです。近年、筋ジストロフィーの医療の進歩は目覚ましく、次々と新しい薬が開発されています。それらの薬の効果を測るとき指標のひとつとなるのが理学療法士が提供する運動機能評価です。この評価は時に国際的に実施される機会があるので、どこの国でも正確で簡単に実施できる評価が求められていますがそれが難しいのが現状です。そこで私は、正確で・簡単で・苦しくない評価法を考案し、さらにはいかに身体機能を良くできるかを目指して、活動量計を用いた評価や、補装具による下肢の機能維持に関する研究を行っています。2009年より信州大学医学部保健学科に着任。2017年信州大学医学系研究科保健学専攻博士後期課程修了。研究分野は、神経筋疾患を対象とした評価指標の研究や運動学習。西澤 公美 准教授 筋ジストロフィーは、今や新しい治療法がさかんに開発されており、私が学生の頃に学んだ常識は既に崩されつつあります。しかし、筋ジストロフィーのお子さんに対する理学療法は、残念ながらあまり進歩がありません。その理由はエビデンスが少ないからです。だからこそ私たちがひとつひとつ積み重ねる研究成果は、現在進行形の医療の発展に間違いなく一役買うことができるのです。 本専攻で学んだ知識は、小児科のある全国の病院、または小児専門病院・施設などで活かすことができます。また、療育センターなど福祉施設に就職している理学療法士もいます。全体的には少数派の小児領域ですが、活躍する場は増えてきています。基礎理学療法学研究から広がる未来卒業後の未来像患者さんの足の硬さを測定中患者さんの歩行評価を実施中

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