保健学科_研究紹介2019
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―24―検査技術科学専攻薬剤耐性菌を俯瞰する 新規抗菌薬の開発が遅滞するなか、基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)などの世界的広がりがヒト臨床分野及び公衆衛生上深刻な問題となっています。これら薬剤耐性菌の早期検出は医療関連感染対策の要であり、研究グループでは臨床治療上重要なESBL産生菌や新型CPEなどの新知見を報告してきています。さらにヒトと密接に関わる愛玩動物、食品、生態系環境にまで研究対象を広げ、ダイナミックな薬剤耐性菌の循環動態について研究しています。また、新生児重篤感染症の主要な原因菌であるB群レンサ球菌で、治療第一選択薬のペニシリンに低感受性を示す菌株を確認し、この分野での世界の研究をリードしています。 46億年の地球史のなかで微生物は様々な天変地異を乗り越えて生き残るべく、多様化、進化を繰り返してきました。病原性遺伝子や薬剤耐性遺伝子を、ヒトに定着性の高い遺伝系統の臨床細菌が安定的に保持しながら伝播・拡散してゆく戦略は臨床の現場でしばしば遭遇する事象です。ヒトとそれをとりまく生態系環境の中で薬剤耐性菌の動態をとらえることで、人類が直面している耐性菌問題の解決に貢献します。 自らが主体となって研究課題の設定、適切な解析アプローチの構築、慎重且つ正確な実験、多面的・多角的な考察に取り組めるような論理的思考力、実行力、発言力を培う努力がこれからの未来に必ずや役立つと信じています。病因・病態検査学研究から広がる未来卒業後の未来像ヒト-生態系環境における薬剤耐性菌循環動態解明のための包括的研究北里大学大学院医療系研究科医科学専攻環境医科学群環境微生物学修士課程修了後,同大学院医学専攻環境医科学群環境感染学博士課程修了(医学博士)。2014年医学部保健学科に着任。長野 則之 教授研究グループではβ-ラクタマーゼの多様化に組換え事象による新たなメカニズムが存在することを明らかにした薬剤耐性菌の表現型スクリーニングと耐性プラスミドの確認検査技術科学専攻コンピュータの目で見る細胞診断と細胞周期に関連するタンパク質 病気の部分より採取した細胞を顕微鏡で観察して、疾患の診断を行うのが細胞診断(細胞診検査)です。細胞診検査は、高度な医学知識と診断のためのトレーニングが必要で、細胞診検査を行う事が出来るのが臨床検査技師(細胞検査士)です。活躍の場は、病院や研究所などさまざまな医療機関になります。当研究室では細胞検査士養成施設への進学率が高いのも特徴で、将来、細胞検査士になる為の基礎知識を学びながら、人の眼だけではなく、コンピュータによる細胞判別や免疫組織化学という高度な技術を使った研究を行っています。 悪性腫瘍は現在の死亡原因の第一位であり、その治療は早期発見に大きく作用されます。細胞診検査は悪性腫瘍の早期発見に大きな役割を果たしています。しかしながら、人の目による判断では病気の特定が難しいこともあり、コンピュータの目を用いた診断技術の開発や免疫組織化学といった最新の技術を駆使することで、将来病気の診断精度が大きく向上することが期待されます。 臨床検査技師や細胞検査士(就職後、1年の実務経験もしくは細胞検査士養成コースにて取得する資格)として病院、検診施設、製薬会社などに勤務することができます。また、大学院へ進学することで国内外の第一線の研究機関で研究者として活躍することができます。病因・病態検査学研究から広がる未来卒業後の未来像細胞を解析するためのコンピュータシステム北里大学大学院医療系研究科で細胞診検査に関わる研究を学び、その後細胞周期関連タンパク、細胞増殖因子、画像解析技術(テクスチャ解析、機械学習)を用いた研究を行っている。木村 文一 講師人体から採取した細胞や組織の染色風景悪性中皮腫の細胞像(パパニコロウ染色)

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