保健学科_研究紹介2019
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―21―検査技術科学専攻蛋白沈着病の病態解明・簡便な早期診断法確立を目指して 生体内の蛋白質の構造が変化し、組織や細胞内に沈着する病気が蛋白沈着病であり、代表的な疾患がアミロイドーシスです。 アミロイドーシスは、構造変化した蛋白質がアミロイド線維とよばれる線維状蛋白となり、細胞外組織に沈着することで発症します。このアミロイド線維は、生理的には非常に排除されにくい蛋白で、徐々に蓄積して様々な臓器の機能を低下させます。有名なアルツハイマー病も脳のアミロイドーシスです。当研究室では、患者さんの組織に実際に沈着しているアミロイド線維蛋白を取り出して、どのような機序で沈着するのかを研究したり、できるだけ発症早期に診断できるような診断法の確立を目指しています。信州大学医学部卒。信州大学大学院修了。米国インディアナ大学医学部病理学教室に留学。遺伝性アミロイドーシスの研究に従事した。専門は神経内科学。矢﨑 正英 教授 アミロイド蛋白の沈着機序をさらに解明することで、沈着防止機構や新たな治療法のアイデアを世界へ発信できる可能性があります。 アミロイドーシスの簡便な診断法の確立は、患者さんの病気があまり進行していない時期に、正確な診断を下せるようになり、より早期の治療実現に役立てられるのではと思っています。 アミロイドーシスを含めた蛋白沈着病の多くは、いわゆる難病とされています。アミロイドーシスを研究することで、将来的に他の蛋白沈着病の病態解明研究を通じて、新しい診断法の確立、よりよい治療法の開発などにつなげていってほしいです。生体情報検査学研究から広がる未来卒業後の未来像心筋アミロイド腎臓沈着アミロイドアミロイド線維 ― 電子顕微鏡写真検査技術科学専攻線維化進展機構の解明と遺伝子検査技術の改良:基礎的・臨床的研究の両輪を意識して 生化学や遺伝子検査学などを担当しています。病院での実務経験を通して、病態を把握できる新規バイオマーカーを見出すことや検査法の改良の重要性を感じました。新規バイオマーカーを見出すためには、基礎的研究が必要です。現在、「線維化進展機構」について研究を行っています。細胞傷害、酸素濃度や細胞密度の変化、脂肪酸などの刺激に対する分子の動きを細胞間相互作用に注目し分子生物学的手法を用いて解析しています。また、臨床的研究として、「遺伝子配列特異的定量 PCR法の改良」を行い、病原体や腫瘍細胞の識別・量的評価への応用を検討しています。常に基礎的・臨床的研究という両輪を意識して研究を展開しています。 臨床検査技師が習得できる技術はタンパクから遺伝子レベルと広範囲に及びます。検査の実務経験は研究活動に活かせます。臨床検査技師の学術的好奇心や研究領域は臨床医とのコミュニケーションによって制限なく広がります。あらゆる領域・疾患について興味を持っても良いのです。病態を把握する新規のバイオマーカーを見出す病態解析研究や検査法改良は臨床検査の実務に還元できる可能性があります。 学部教育や研究活動から「変化に気づき、課題を見出し、そして解決する」という基礎力を養った臨床検査技師は病院・研究機関・企業などあらゆる分野で活躍できます。それは、生体情報(検査値)を扱う臨床検査技師が医学・医療に貢献できることを意味します。生体情報検査学研究から広がる未来卒業後の未来像線維化進展機構の解明 「細胞間相互作用」「細胞傷害・脂肪酸・細胞密度」「線維化促進タンパク(オステオポンチン,OPN)」遺伝子変異・多型を標的とした遺伝子配列特異的定量PCR法の改良臨床検査分野の研究における大切な両輪東京医科歯科大学医学部保健衛生学科卒業信州大学大学院博士課程修了(学位:博士(医学))信大病院臨床検査部副技師長(遺伝子・染色体検査)2018年 現職松田 和之 教授

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