保健学科_研究紹介2019
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―15―看護学専攻小児・母性看護学領域オキシトシンが及ぼす母子関係への影響に関する研究 オキシトシンは脳下垂体後葉という部分から分泌されるホルモンです。これまでの研究では、陣痛を起こしたり母乳分泌を促進したりする作用があると言われてきました。近年、対人関係に関与することが明らかとなり、さらに、リラックスをさせたり痛みを緩和する作用があることがわかってきています。一方、過剰に分泌されることによって攻撃性が増加することなども少しずつわかってきました。オキシトシンがヒトにどのように作用するかが分かれば、看護・助産ケアに活用できるのではないかと考えています。現在は検査技術科学専攻の先生にご協力いただき、唾液や血液からこの濃度を測定する研究をしながら、母子の愛着や精神的安定性についても研究しています。 看護ケアや助産ケアを実践する際に、ヒトの体の仕組を知ることはとても大切です。助産師が試薬や実験機器を取り扱うイメージは薄いかもしれません。周産期に重要とされているオキシトシンに注目し、助産師として研究することで、お母さんや赤ちゃんへのケアがより充実し、順調な育児や近年増加している虐待を予防するケアにつながる可能性があります。 看護師、保健師、助産師どの職業にも母子ケアや家族への看護が大切です。卒業後は病院等の医療機関に就職する学生が多くを占めています。研究を通じて、根拠をもつことの大切さを学び、臨床現場に活かすことが出来ます。母性看護学・助産学研究から広がる未来卒業後の未来像実験室でのオキシトシン濃度測定の様子ELISAキットを用いた比色競合法による実験プレートお母さんは赤ちゃんを大切そうに抱っこ信州大学医学部保健学科看護学専攻卒業、同大学院医学系研究科保健学専攻博士前期課程修了(看護学修士)助産師での病院勤務を経て2015年医学部保健学科看護学専攻着任、現在に至る。鮫島 敦子 助教看護学専攻小児・母性看護学領域女性、母親の体験を知り、こころに寄り添う看護のあり方を探る 一人の女性が妊娠、出産し母親となって生きていくということには、喜びもありますが、つらさや悲しみ、心身の健康上のリスクもともにあります。多くは女性ご自身の持てる力で乗り越えられる課題かもしれません。しかし、専門的な視点で寄り添い、適切なケアによってその女性とご家族を支援させていただく事が必要となる場合もあります。近年では特に、周産期のメンタルヘルスケアの需要が高まっています。 研究の中では様々な背景を持つ女性の、妊娠・出産・育児におけるありのままの体験を大切にします。そして、女性として、母親として、どのように楽しさを見出されるのか、あるいは、ネガティブな感情とどのように付き合われているのかに着目し、ニーズを見出して支援を検討します。富山県出身。富山大学大学院医学薬学教育部看護学専攻博士前期課程修了(看護学修士)。 富山大学附属病院にて助産師として勤務し、2019年4月に医学部保健学科に着任。豊岡 望穗子 助教 この研究は、妊娠・出産・育児の中で、困難に直面し、つらい思いをしている女性や家族のニーズに寄り添う支援に役立つと考えています。また、女性の体験された世界を明らかにすることで、地域社会全体の妊娠・出産・育児への理解を一層深め、支援活動や環境づくりにも役立てていけたら、と思っています。 複雑な背景の母子が増えており、臨床に出ると様々な価値観に触れると思います。常識に囚われないケアを求められる事もあります。まずは基本的な知識・技術の蓄積と研究的な視点を大切にしつつ、新しい可能性の探索を楽しみながら実践してみてほしいです。母性看護学・助産学研究から広がる未来卒業後の未来像母親の主観。この状況はどのような体験だと思いますか。生まれたての赤ちゃん。この喜びの瞬間には、母親をはじめ、大勢の不安と祈り、苦労と努力、様々な感情が息づいている。日々研究が進む周産期メンタルヘルスの分野。

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