工学部_研究紹介_2020_日本語版
71/92

准教授鈴木章斗研究から広がる未来卒業後の未来像鈴木研究室では、数学を用いて物理現象を解明することを目指す数理物理学の立場から、さまざまな数理模型や物理模型を研究しています。最近では特に、量子ウォークと呼ばれる模型の研究をしています。量子ウォークは、さまざまな量子現象を効率的にシミュレーションできる量子シミュレータの一種ですが、量子コンピュータ上で実行可能な量子アルゴリズムへの応用も数多く考案されています。本研究室では、量子シミュレータや量子アルゴリズムへの応用も積極的に研究しています。量子ウォークは、本格的な研究がはじまって20年が経ちましたが、今なおさまざまな応用を生み出しつづけています。最近は、量子コンピュータはクラウド上で誰でも利用できます。今はまだ、理論的な研究が中心ですが、実際に社会に役立つモノが生み出される日も近いかもしれません。卒業後の進路は一般企業への就職、教員や公務員の他、大学院に進学してさらに研究を深める学生もいます。本研究室では、ゼミを通して養われる論理的思考とさまざまな応用が期待されている量子コンピュータに関連する知識を身につけた人材を育成します。北海道大学で学位取得後、学振研究員、Paris-Sud滞在、MI研究所PD、信州大学助教を経て、2014年より現職。専門は数理物理。最近は、量子シミュレータの数理を研究している。量⼦シミュレータと量⼦アルゴリズムの数理【私の学問へのきっかけ】私にとって高校数学は消化不良の学問でした。計算はできるけど、意味がちっともわからないという感じです。大学では物理の勉強をしたかったのですが、「物理を学ぶには数学が不可欠だ!」と思った私は、大学では数学科に入り、独学で物理を学ぶことにしました。おかげで高校数学の謎はスッキリましたが、今度は物理で使う数学が納得できなくなりました。そんなとき出会ったのが、現在の研究分野である数理物理学です。⼯学基礎部⾨グラフ理論を用いたエネルギーの計算2016年度応用数学研究奨励賞受賞助教岡本葵研究から広がる未来卒業後の未来像物理現象の多くは微分方程式で書き表わすことができます。現象そのものを一旦離れて、方程式という抽象的な枠組みで考えることにより、個々の状況に依らない統一的な視点から物事を理解することができます。ただ、株価の予測や一週間先の天気予報がほとんど当てにならないように、未来を予見することが困難な現象も現実にはよくあります。それは現象の複雑さのために方程式が非線形になることが原因です。本研究室では、そのような非線形微分方程式を数学的側面から研究して、非線形現象の解明に取り組んでいます。物理・生物・化学など多様な分野に微分方程式は表れます。多様な現象を理解するために不可欠な微分方程式は、世界中で活発に研究が行われています。方程式を解析して抽象的に得られた事柄から実際の現象を説明できることもあり、具体と抽象とを行き来することができるよう研究のさらなる発展が期待されます。数学の研究では、物事の本質を理解したり、理路整然と物事を説明する、といったどのような分野でも活きる能力が涵養されます。それらを活かして企業への就職や大学院に進学してさらなる研究への道に進む学生もいます。京都大学大学院理学研究科博士後期課程を修了後、2014年より現職。研究分野は非線形偏微分方程式。現象を記述する微分⽅程式⾮線形性の解析【私の学問へのきっかけ】大学の数学、特に解析学では、等式ではなく不等式を用いた証明が多いことに戸惑いと驚きを覚えました。自分でも不等式を使えるようになりたいと思って勉強をしているうちに、芸術的な不等式やその利用法に魅せられ、今では、非線形偏微分方程式に関する研究で様々な不等式と日々格闘しています。ゼミの様子。自分が理解するのはもちろんのこと、それを分かりやすく解説する必要がある⼯学基礎部⾨69

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る