工学部_研究紹介_2020_日本語版
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准教授羽藤広輔研究から広がる未来卒業後の未来像建築や家具など人間の生活空間に関わるもののデザインについて、理論と実践の両面から取り組んでいます。前者では、特に昭和期建築家が展開した伝統論などの言説と建築設計を中心とした制作活動の関連について研究し、後者では、建築設計や家具デザインの実践、設計競技(コンペ)への参加を通じて、空間デザインの新たな可能性を模索しています。空間創造の現場において、作者が何を考え、どんなことに影響を受け、それがいかに制作物に反映されたのか、多様な事例が存在します。例えば、1950年代の伝統論争で注目された建築家白井晟一は、晩年、一日の半分を書の手習いに費やし、それが建築の設計にも影響したといいます。自由な発想、独自の視点が、空間デザインの意味やあり方を発展させます。建築設計事務所やデザイン事務所など、空間デザインに関わる分野での活躍を期待しています。東京藝術大学建築科卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科修了、安藤忠雄建築研究所、東京藝術大学建築科助教を経て、2015年より助教、2017年より現職。博士(人間・環境学)、一級建築士。空間デザインの理論と実践【私の学問へのきっかけ】小さい頃から絵を描くことが好きだったので、大学ではそれを生かせる建築学科に進みたいと考えました。大学の設計課題では、図面やパースを描いたり、模型を作ったりと、学問というよりは、ものづくりを楽しいんでいたように思います。建築学科住宅設計の際に制作したコンセプトモデル/家具として使用することもできる、スケール横断的なオブジェクトになっている『コンフォルト』(2011.2)に寄稿した白井晟一展レビュー記事/習書の取り組みについても触れたN准教授岩井一博研究から広がる未来卒業後の未来像建物の設計を行う上では、当該建設地の気象状況を明らかにしておくことが必要になります。例えば、建物の熱負荷シミュレーション計算や有効なパッシブ手法を検討する場合は、その地点における具体的な気象データが必要になります。即ち、それは建物の断熱性や気密性をどのようにすれば良いのか?自然エネルギーは何を利用することができるか?を、事前に知ることを意味しています。今までに、長野市や松本市における温度や相対湿度などのデータと、人工衛星によるリモートセンシングデータを用いて気象のマップを作成してきました。これにより、建設地の気象データの整備と都市気候の実態について明らかにしています。長野県出身。建設省建築研究所第2研究部、信州大学工学部技術部にて勤務。2016年より現職。・博士(工学)・一級建築士建築学科⻑野県における「⾃然環境とすまい」をテーマにした調査・研究建築環境に関する学習や研究を通じて、受身ではなく、自発の姿勢を身に着けてもらいたいです。また、環境に配慮した建築物の設計や建設に関する職を目指してほしいです。長野県の気候の特徴、次のとおりです。①内陸に位置するため、気温の日較差や年較差が大きい。また、湿度が低く雨量も少ない。②冬期の気候は、北部では積雪が多く、中部と南部では晴天になることが多い。③雲の発生が少なく、日照時間が長い。④3,000m級の山地で覆われているため、風速は小さい。これらを踏まえて、住まいのあり方を研究していきます。建材による湿度コントロール。建材に吸着した水分が、6秒後には内部に吸い込まれている。1sec. 2sec. 3sec.4sec. 5sec. 6sec. 現状の表面温度改善後の表面温度夏期の表面温度。現状の建物の外表面に、熱処理木材と高反射塗装を施すことにより、表面温度の低減が可能。南壁面41℃南壁面34℃屋根面63℃屋根面35℃【私の学問へのきっかけ】今振り返って見ると、子供の頃に「ちいさいおうち」と言う絵本に出会ったのが、建築に興味を感じた一歩目かなと思っています。この本は、静かな田舎に建つ小さい家が主人公で、時代の変貌と共にその周囲がどんどん都市化され、高層ビルの谷間になってしまった家が最終的には静かな郊外に移築されていく過程が描かれています。歳月の移り変わりがとても活き活きと描かれているため、何度も繰り返し読んだことを覚えています。63

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