工学部_研究紹介_2020_日本語版
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准教授中山昇研究から広がる未来卒業後の未来像中山研究室では、世の中にない新しい材料を開発することで、医療・福祉分野さらに航空・宇宙分野に貢献することを目的として研究を進めています。例えば、骨折の治療用の材料として、骨と同じ強度で、さらに穴があいているチタン材料を開発しました。この材料を使用することで骨の成長を促進させ完治までの時間が短縮することがわかりました。また、福祉用や障害者用に、軟らかくて力の大きさと方向がわかるセンサを開発しました。このセンサを使用することで車いすを使用している際の力の分布や床ずれ防止などに役立つと考えています。新しいセンサや材料を開発することで、新しい術式や安心して介護ができるシステムを考えています。さらに、車いす等の最適設計を行うことでパラリンピックでのメダルを獲得するのも夢ではないかもしれません。軽くて強い材料を開発することで宇宙分野でも利用されると考えています。国内・海外での学会発表ができるように、しっかりと研究開発を行っていますので、卒業生はあらゆる分野で力を発揮し、活躍しています。特に、中山研究室の卒業生は自動車関連や製造・加工関連で活躍しています。秋田県立大学助手を経て、2007年より現職。研究分野は、塑性加工、成形加工新しい材料を開発することで医療・福祉分野に貢献する【私の学問へのきっかけ】もともとものづくりが好きでプラモデルやラジコンカーなどを作っていました。手を動かしてものを作ることが好きなこともあり、機械系の勉強が好きになっていきました。いろいろ勉強していると、材料にもいろいろな種類があることを知り、さらに自分で開発することが出来ることもわかりました。それからは、世の中にない新しい材料作りに夢中になっています。機械システム⼯学科骨折した場合、骨の強度より強いチタン合金製のプレートやスクリューが用いられていますが、骨より強度が硬いため完治した後に取り出す必要がありました。そこで、骨と同じ強度で、さらに穴が空いているチタン材料を開発しました。骨と同じ強度ですので完治しても取り出す手術をする必要が無く、さらに穴があいていることで骨の成長を促進させ完治までの時間が短縮することがわかりました柔軟であり力の大きさや方向を検知できる新しいセンサ(左側)とセンサを設置した車いす(右側)准教授西村正臣研究から広がる未来卒業後の未来像技術発展に伴う製品の小型化により、材料に求められる寸法はどんどん小さくなっています。ナノスケール材料とは、材料寸法が数ナノメートル[nm](=10-9[m])であったり、特徴的な構造がnmレベルに存在するような材料です。材料寸法が小さくなると相対的に原子一つ当たりが占める割合が大きくなるので、材料を原子の集合体として評価する必要があります。そこで本研究室では、原子間に生じる相互間力を分子動力学法という計算手法を用いて評価し、材料の変形をシミュレーションすることで、ナノスケール材料の変形メカニズムについて検討しています。西村研究室では、計算機シミュレーションにより、様々なナノスケール材料を検討しています。まだ実用化が困難な新素材や、機械的特性が十分に理解されていない材料が、我々の身近な材料となることで,より便利で安全な未来が期待されます。卒業生の進路は、自動車メーカーや家電メーカーなどと多岐にわたります。本研究室で培われる材料の機械的特性の理解力や計算機を用いたシミュレーション技術の体得は、社会に出てからも役に立ちます。2009年神戸大学大学院自然科学研究科博士課程修了。信州大学工学部助教、講師を経て、2017年4月より現職。研究分野は分子動力学、計算固体力学、材料力学。ナノスケール材料の固体⼒学原⼦レベルから変形メカニズムを理解する【私の学問へのきっかけ】大学に入ったものの、機械工学の中で最も興味がある専門分野を決めきれずにいました。そんな中、ものを作るためには材料がなくては始まらない。材料力学、固体力学は機械工学の土台であるといった授業を受けた。それまで、材料研究は機械工学の中でも地味なイメージしか持っていませんでしたが、その言葉に導かれ研究を始めてみると、実験やシミュレーションによる材料特性の評価、予測など非常に興味深いものでした。機械システム⼯学科0-505010nm14.413.415.4Atomic shear stress [GPa]Atomic bending stress [GPa]Lattice defect実際には見ることが出来ないナノスケールの変形を計算機実験により検討できる。図は、欠陥を有するCNTのねじり・曲げ解析(a) Depth = 2nm(b) Depth = 4nm(c) Depth = 5nm50nmAtomic strain, γ 0.0 0.5材料内部で生じる複雑な原子構造変化なども、計算機シミュレーションによって解明できる。図は、金属ガラスに対する押し込みシミュレーションにおける原子ひずみ分布57

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