工学部_研究紹介_2020_日本語版
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准教授鈴木康祐研究から広がる未来卒業後の未来像鈴木研究室では、身近にありながらまだよく分かっていない複雑な流れを、コンピュータシミュレーションによって解明する研究に取り組んでいます。近年、計算機のめざましい発達のおかげで、これまで調べることが難しかった複雑な流れを精度よく解析することができるようになってきました。特に、『格子ボルツマン法』と『埋め込み境界法』という二つの強力な計算手法を組み合わせることで、流れと物体が相互作用するような現象(身近な例では、木の葉がひらひら舞い落ちる現象や昆虫の羽ばたき飛翔)の研究を行っています。チョウやハエに代表される小型の昆虫による羽ばたき飛翔は、身近な現象でありながら未解明な部分が多くある現象です。もし、羽ばたきによって作り出される流れが解明され、どれほどの揚力が得られるかが分かるようになれば、羽ばたいて飛ぶ飛行機を作れるようになるかも知れません。当研究室では、機械力学の基礎である四力学のうち、特に熱力学と流体力学の専門的知識を身につけます。また、研究を通して、論理的に考え、説明し、文章にする能力や、プログラミングの技術を身につけます。これらは、幅広い技術系職業に活かされます。京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。信州大学工学部助教を経て,2019年より現職。埋め込み境界-格子ボルツマン法を用いた移動境界流れの数値計算,および昆虫の羽ばたき飛翔の研究に従事。『コンピュータシミュレーション』によって⾝近だけど複雑な流れの理解を⽬指す【私の学問へのきっかけ】子供の頃から,パズルや知恵の輪,将棋といった「考える」ゲームが好きでした.その延長として,数学や物理といった,考えて理解することが最も重要な科目を好きになりました.流体力学を研究領域にしているのは,学生のときに学んだ多くの学問の中でも,研究分野や研究手法が多岐に渡っており,いつまで考えても飽きることのない学問だからです.機械システム⼯学科研究室の様子(Sai+スペシャルNo.365より引用,URL:http://saiplus.jp/special/2016/03/365.php)昆虫の羽ばたき飛翔の研究。チョウを模した簡単な計算モデルを作り、その自由飛翔を調べている准教授高山潤也研究から広がる未来卒業後の未来像「計測を制する者は、技術を制する」という言葉もあるほど、簡潔で高性能なシステムの実現には、計測技術が不可欠と言われます。高山研究室では、マイクロ波を使ってコンクリート壁の健全性を診断する技術など、音や光・電波といった波動が反射や伝播してきた様子を分析することにより、非破壊・非接触にものの状態を計測する技術の研究に取り組んでいます。さらに、いつも同じ計測範囲や計測精度ではなく、計測システム自身が目的に応じてその性能を適応的に変化させられる能力を備えた「知的計測システム」へと、これらの技術を発展させることを目指しています。計測技術の高度化は、どんな世界をもたらすのでしょうか?その答えは、すべてが自動化された世界だと考えています。たとえば、近い将来では自動運転が可能な(本当の)自動車、さらに人間と共存・協調できる完全自律型ロボットなど、未来のものと思っていた多くの技術が現実となります。計測技術は、検査や診断ばかりではなくロボットの外界認識や運動制御など、さまざまな技術の実現に欠かせません。ですから、卒業研究を通して身に付けた知識と問題解決能力が、機械系のみならずメカトロニクスの幅広い分野での研究・製品開発に活かされます。日産自動車(株)、東京工業大学大学院理工学研究科助手・助教を経て、2012年より現職。知的計測システムの構築とそれに係わる高精度計測技術や非線形信号処理理論の研究に従事。近年は,安全・安心のための診断技術の研究に力を入れる。⾃ら考える計測システム:波動を使って触らず測る知的計測技術の実現【私の学問へのきっかけ】幼少の頃から乗り物、特に自動車が大好きでした。大学進学時までそれは変わらず、さらに世界一の大衆車を作るという夢を持つようにもなってたので、機械系しかない!と思い、周囲の意見には耳も貸さず進学先を決めました。大学でさまざまな専門科目を学ぶうち、自動車の事故回避や自動運転には高度な計測技術が不可欠であることを理解し、一旦は自動車会社へ就職したものの、計測技術を極めたいとの目標のもと研究職へ身を転じました。機械システム⼯学科マイクロ波レーダ装置とレーダ画像(内部断面画像)の例。計測精度をさらに高め、誰もが簡単に構造物の内部情報を詳細に把握できる技術とすることが目標である無線センサネットワークのための端末位置計測実験の様子。センサ端末間の無線通信情報のみを利用して、端末の位置推定を実現する技術の構築を試みている56

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