工学部_研究紹介_2020_日本語版
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オイルフィルム法による壁面剪断応力の測定二次元噴流の制御とモード解析古くて今だ新しい乱流研究。20世紀が残した最大の難題の一つとも言われています。近年はスーパーコンピューターや大型風洞装置を用いて熱心な研究が国際的に進められています。その中で松原研究室では実験的なアプローチを中心に乱流の本質に迫るため、現在建設中のイタリアの巨大パイプ流施設による国際共同研究CICLoPEへの参加を進めています。教授松原雅春研究から広がる未来卒業後の未来像流体実験では流体測定装置に以外にも光学装置や音響装置など様々な機器を使い、それらを統括的に制御して実験しています。これらの測定システムの構築や実験の経験を基に流体機器の新製品開発などで活躍しています。王立工科大学(ストックホルム)および東北大学を経て、2000年信州大学助手。2014年より現職。流体力学とくに乱流に関する研究に従事。雑然のなかの秩序「乱流の撹乱構造」をとらえる【私の学問へのきっかけ】中学・高校時代から一般向け科学雑誌を毎月読んでいて、量子力学や天文学など物理学を中心とした未解明問題に強くひかれました。大学の授業で流体力学を学ぶうち、教科書的な問題設定と現実にある流れがかけ離れていることに驚き、おもしろいなと思いました。その後、流体工学の研究室に入り、古典力学でも「乱流」という未解明問題があることを知り、一生かけて研究していこうかと決心しました。機械システム⼯学科紅茶にミルクをいれてかきまわすと、大小の渦が複雑に絡み合って三次元的な構造が絶え間なく変化します。このような乱流はランダムな挙動を示すカオス(混沌)の身近な代表例でもあります。松原研究室では、MEMSセンサーでその乱流中の撹乱構造の解明に取り組んでいます。最近では、激しい非線形現象の乱れの中にも,数学的に取り扱いが簡単な線形現象が潜んでいることを示す驚くべき実験結果を得られています。この成果は,近い将来、乱流解明へとつながると期待しております。MEMSマイクにつながっている壁面孔列。孔の直径は0.6mm孔の左には直径2.5μm白金センサーを持つ熱線センサー乱流と層流が混在する流れ。7mm離れた二枚のガラス板間に水が流れている。流れの可視化にはフレーク粒子を使用教授吉野正人研究から広がる未来卒業後の未来像吉野研究室では、流体や熱・物質の流れをコンピュータシミュレーションによって解明する研究に取り組んでいます。近年、効率の良い計算手法の開発とコンピュータのめざましい発達のおかげで、これまで調べることが難しかったミクロな世界の流れを精度よく解析することができるようになってきました。特に、『格子ボルツマン法』というパワフルな計算手法を用いて、微小液滴が衝突する際の挙動や小さな空隙をもつ物体内の熱流動現象など、主に『マイクロフルイディクス』(微小スケールの流体力学)の研究を行っています。シミュレーションで用いる計算機プログラムを学生が自作で構築しています。将来的には、得られた研究成果を集大成し、混相流のような複雑な熱流動現象を解明するためのソフトウエアの開発・製作を目標としています。自動車関連産業への就職が多く、家電メーカや重工、工作機械や精密機器を扱う企業などにも卒業生を輩出。自分の専門分野にとどまらず、新しい領域の課題解決に意欲的な研究者・技術者として様々な分野で活躍しています。【私の学問へのきっかけ】高校生になって、それまで好きだった数学に加えて化学に興味を持ち、大学では化学工学科に入学しました。その中で今の研究分野に出会い、現在は機械システム工学科に所属しています。進学する大学の学科を選ぶ際、何となく面白そうだからという理由でもいいと思います。実際に入学すると、学科の名前からは想像できない楽しい分野が数多くあることに気づくでしょう。また、学生時代の私の先生は、学問の厳しさはもちろん面白さも教えてくれました。一つ一つの出会いを大切にして、いろいろなことに面白いと興味を持つことが重要だと感じています。機械システム⼯学科京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2000年信州大学に着任。助手、講師、准教授を経て2012年より現職。格子ボルツマン法を中心とした混相流などの数値流体力学に関する教育・研究に従事。ミクロな世界の熱や流体の流れが『コンピュータシミュレーション』によって⾒えてくる!※Sai+スペシャルNo.365より引用SBC信越放送「YES!ものづくりすごいぞ!信大工学部」で放映された研究室紹介:シミュレーション結果を見ながら研究室で議論している様子(左下図)、卒業研究に取り組んでいる風景(右下図)(URL:http://saiplus.jp/special/2016/03/365.php)液液二相のスラグ流解析(左上図)、狭窄部を通過する赤血球の変形の様子(左下図)、血管分岐部まわりの血流解析(右図)53

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