工学部_研究紹介_2020_日本語版
52/92

教授澤田圭司研究から広がる未来卒業後の未来像核融合発電は、高温・高密度のプラズマ中の重水素と三重水素の核融合反応により発電を行うものです。三重水素は発電中にリチウムから作られます。長年の研究により、プラズマを閉じ込める容器の中心部では核融合発電が可能となる1億度以上のプラズマが生成されていますが、プラズマとの接触による容器の損耗が最後の重要課題となっています。私たちの研究室では、容器を守る役割を果たす容器付近の原子・分子とプラズマとの反応について研究を行っています。重水素とリチウムがほぼ無尽蔵にあることや炉の安全性が核融合発電の特徴です。核融合発電が実現すれば、エネルギー資源の問題がなくなります。多くの人の就職先は、自動車メーカなど、機械システム工学科の一般的な就職先と同じです。核融合科学研究所等で、大学院生としてプラズマ研究を続ける人もいます。京都大学大学院工学研究科博士課程にて博士(工学)を取得後、1994年から信州大学工学部に勤務。現在の研究テーマは修士学生のときから。専門はプラズマ分光学。核融合発電の実現へプラズマ中の原⼦・分⼦反応の解明【私の学問へのきっかけ】大学の学部時代は野球ばかりして学問をわすれていたのですが、高校生になった頃にブルーバックスのしおりで見たニュートンの言葉「私たちは浜辺で、より美しい貝殻や、より滑らかな小石をあちこちさがし求めている子児のようなものである。未知の真理の大海は眼前にはてしなくひろがっている」などから、潜在的にはずっと研究者になりたかったのだと思います。いま研究職についているのは修士・博士課程でご指導いただいた先生の力量(マジック)のおかげです。機械システム⼯学科核融合発電実証を目指した国際熱核融合炉ITERがフランスで建設されています(日本・EU・ロシア・米国・韓国・中国・インドが参加)。設計には、澤田研究室で開発された計算機コードも利用されたhttp://www.iter.org/gallery/com_image_downloadThe ITER Organization provides images and videos on its public website free of charge for educational and institutional use..核融合プラズマを想定して開発したシミュレーションコードを、研究室のRFプラズマ(右写真)で観測される原子・分子発光線の解析に適用し、計算機コードの信頼性を検証している研究から広がる未来卒業後の未来像【私の学問へのきっかけ】小学校の時、仮説を立てディスカッションし実験で検証していく“仮説検証型の科学”の楽しさを教えてくれた先生との出会いが“科学者になりたい”と意識するきっかけでした。以来、大学を卒業し、企業に勤め、状況や対象が異なっても、自分の中の“科学を楽しむ心”は変わっていません。ただ、今の専門は、数理工学や熱流体工学の楽しさを教えてくれた方や、スタンフォード大学での共同研究などの挑戦的な研究をさせてくれた方々のお陰です。機械システム⼯学科教授杉岡秀行慶応大学修士(電気)修了。キヤノン(株)にて30年間勤務。スタンフォード大学との共同研究やフロンティア研究を実施し流体MEMSの設計手法の研究で京都大学より博士(工学)の学位を取得。2017年6月より現職。ナノ界⾯領域の理解から、固液界⾯をダイナミックに制御、多様なマイクロ流体システム・機能材料を創⽣界面を知ることは、自然を理解し活用していくことに通じています。例えば、水または電解液中に置いた導電体に電界を印加すると、電界の二乗に比例した強い流れ(非線形界面動電現象)が発生し、これを活用すれば、小型で高性能なポンプ、バルブ、ミキサを小さなチップの上に形成でき、医療分野等に応用できる可能性があります。杉岡研究室では、①身近な熱現象が示す不思議な熱デバイスの研究、②人工繊毛の研究、③不思議な機能を持った材料の研究、④マイクロ流体システムの研究等を通じて、界面現象を利用した新規なマイクロ流体素子やシステムまたは機能材料を提案し検証するとともに、その理論的基礎を設計論として確立し、応用していく研究を進めていきます。杉岡研究室では、熱的・電気的な界面現象と流れが関与する複雑現象の基礎と応用に関する研究を行っています。仮説を立て実験検証し、ビデオ等を定量的に解析することでモデル化し、現象の背後にあるメカニズムに迫ります。こうした研究力はどこの企業でも重要であり、自動車メーカーやトヨタ系及びJR系の会社等へ、修士の学生さんは就職しています。界面現象の新知見は、革新的なナノマシンあるいはナノシステムの技術の芽を生み出す可能性を持ちます。特に、水生微生物などの生命体を模したナノ機械の構築には、界面とその周りの流体力学的及び熱力学的な理解が不可欠となります。ここでは。非線形ナノ界面現象の研究からナノマシンやナノシステムの実現を目指します。人工繊毛の基礎実験H. Sugioka, N. Nakano, Physical Review E 97, 013105, 2018 掲載Post-ELEKIN2012で座長を務めているところ人工繊毛の理論予測H.Sugioka,Phys.Rev.Applied3,064001(2015)掲載50

元のページ  ../index.html#52

このブックを見る