工学部_研究紹介_2020_日本語版
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教授吉谷純一研究から広がる未来卒業後の未来像頻発する水害、水不足、水環境汚染などは世界共通の問題です。しかし、自然・社会条件は地域により多種多様なため、問題の構図と有効な解決策は地域特有です。吉谷研究室では、地元の千曲川流域、海外事例としてカリフォルニアやタンザニア等の個別水問題や政策立案の事例を取り上げ、観測事実や新政策立案の補強や数値モデルによる科学的な予測や評価の研究を行っています。学生は水問題の実際と全体像を理解した上で、自分の興味のある個別のテーマを選び、研究を行っています。事例を取り上げ、現状の全体像を把握し、研究はなぜ、誰のために行うのか、研究成果はどう使われるのかを常に意識することで、適切な問題設定ができるようになります。個別知識や数値計算能力だけでなく、研究を通して社会人とのコミュニケーション能力が高まります。研究室卒業生はこれを生かして、官公庁、コンサルタント、建設会社に就職の他、大学院に進学しています。1983年北海道大学土木工学科卒、1995年UCDavis修了。建設省土木研究所、国土技術政策総合研究所、京都大学防災研究所などを経て、2016年より現職。主な研究分野は、水資源政策、河川計画、水文予測など。世界各地の⽔問題解決に向けた統合⽔資源管理を⽀援する【私の学問へのきっかけ】大学では社会とのつながりが最も強いと思った土木工学科を選びました。就職後、最初に配属されたのが研究所の河川部門で、それ以降、水に関する政策支援の仕事をしてきました。就職後、専門知識と能力の不足を痛感し、カリフォルニア大学デーヴィス校に入学し水資源政策など広範囲の勉強をしました。専門知識があると、顧客の期待を上回る問題設定と解決策を提示することができることを実感するようになりました。千曲川からの氾濫想定浸水深の表示事例(長野市長沼公民館前)⽔環境・⼟⽊⼯学科3日雨量(mm)想定浸水深レーダが捉えた長野市と周辺の豪雨准教授河村隆研究から広がる未来卒業後の未来像河村研究室では、最も身近な土木施設である舗装、橋や建物などの構造物を支える地盤を対象とした研究を、主に室内試験に基づいて実施しています。土舗装は、保水性が高く、水たまりやぬかるみが生じないことから、歩行者用舗装として公園や歩道に多く適用されています。しかし、高い保水性のために、長野県のような積雪寒冷地では、ひび割れなどの凍害劣化が懸念されています。そこで、凍害劣化に強い土舗装に必要な材料や施工法の開発を目指しています。また、土木構造物に用いられるコンクリートや鉄筋と比較して強度が低い土を補強し、巨大土構造物を築造するための研究も実施しています。土舗装に凍害劣化への耐久性が負荷されれば、水たまりやぬかるみの凍結が生じなくなり、人や自転車がスリップ事故の発生を抑制することができます。本研究の成果は、人にも環境にもやさしい歩行者用舗装として、健康長寿が望まれる高齢化社会へも大きく貢献できます。卒業生の多くは、国土交通省、県庁、市役所などの官公庁(公務員)、建設会社や建設コンサルタントなどの建設業界、JRやNEXCOなどの交通インフラ業界に就職し、土木技術者として地域や社会に貢献しています。大学院に進学する学生も少なくありません。九州大学工学部卒業、同大学院修了、信州大学工学部助手、学内講師、助教を経て、現職。主な研究分野は、積雪寒冷地に適した機能性土系舗装の開発、粘土の水分保持特性の評価、ジオグリッドを用いた地盤の補強など。⼈・環境にやさしい舗装-⼟系舗装巨⼤⼟構造物-地盤の補強【私の学問へのきっかけ】中学生、高校生のとき、愛媛県から香川県に列車通学しました。通学列車の車窓から建設途中の瀬戸大橋や大橋に繋がる鉄道の高架化の工事を見て、「土木工学」という分野を意識するようになりました。子供の頃から図画工作やプラモデルなどの「ものづくり」が好きだった私にとって、土木分野は、つくるものが壮大で地図にも残る、つくるまでの過程も大規模である、ということで非常に魅力的でした。自分もそんな仕事に携わってみたいと思い、この分野を選びました。⽔環境・⼟⽊⼯学科補強土擁壁の施工現場、壁面パネルと金属補強材の接続(上)全景(下)土舗装の施工例42

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