工学部_研究紹介_2020_日本語版
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研究から広がる未来卒業後の未来像有機半導体や新しいナノ材料を用いれば薄膜作製に必要な温度や時間を桁違いに減らして製造エネルギーが1/10以下になり環境にも優しい。薄いフィルム上に、高性能太陽電池や発光デバイスを作ることでいろんなところに貼ったり埋めこめる。有機材料と生体の類似性を活かして環境や健康状態を知る超高性能センサも実現できるかも。医療やエネルギーに優しい材料・デバイスの実現が期待されます。電子材料・デバイス(部品)は一見目立たないけど、コンデンサやそこから発展した産業は日本・世界の電気電子産業の要です。電気電子工学分野は非常に広く多様な業界への進路が考えられますが、自分で作った物が工夫とアイデアで何倍にも性能が向上する過程や達成感を通して、自力を付ければ飛躍が期待できます。新しいナノ材料と薄膜化技術で次世代の発光・光発電・センサなどを実現する!電⼦情報システム⼯学科【私の学問へのきっかけ】シリコンを基盤としたエレクトロニクスの限界が叫ばれ始めた1990年代、従来の材料では実現し得ない機能を持つ材料の探索が叫ばれる中で、注目され始めたのが有機半導体や新規ナノ材料でした。現在、その可能性は大きく広がり次世代の発光デバイスや太陽電池、さらには生体を模写した高性能センサの「心臓部」として期待されています。一方で、まだわからないことも多く残された新しい分野で、アイデア次第で様々な可能性が潜んでいます。驚くほど簡単に作れて思いがけない優れた、役立つ機能を実現したい。そんなことにはまって今に至っています。伊東研究室では、有機半導体やナノシート、量子ドットなど厚さや大きさがナノメートル(10億分の1メートル)サイズの新しいナノ材料を組合わせた太陽電池や有機EL・量子ドット発光ダイオード、センサ、コンデンサ等の高性能化と動作のしくみを調べる研究をしています。特殊な真空装置ではなく、工夫次第で桁違いの安さと簡便さで製膜できる塗布(=ウェットプロセス)技術を用いつつも、驚異的な性能と新機能を発現することを目指して、新材料の探索と新しい機能の発現や高性能化のしくみの調べながら画期的な次世代デバイスの実現を目指しています。教授伊東栄次東京工業大学、信州大学助手、信州大学准教授を経て2015年より現職。研究分野はナノ材料を用いた薄膜デバイス・システム応用。特に塗って作れる太陽電池、有機EL、センサ、コンデンサ等の省エネデバイスの開発と応用に注力。当研究室では様々な装置を学生自身が操作して研究します。光学的評価を行う様子。助教浦上法之研究から広がる未来卒業後の未来像パソコンやスマートフォン等の電気電子機器は目に見えないほどの小さな素子から成り立っていますが、高性能化のために小型化や新たな材料を用いられてきています。また近年では、それらの進化し続ける性能に加えてライフサイエンスなど異分野でも利用できるなど新しい付加価値を与える必要性が高まってきています。このような背景から当研究室では、特に層状物質という特異な性質を示す電子材料により、①新たな現象がみられる電子材料の発見とその応用に加えて、②電気/磁気/光/熱といった電気電子工学に関連する物理性質を融合することにより新原理素子の提案と実証を目指しています。層状物質は物理的性質に注目が集まる一方で、素子応用の検討例が少なく大きな可能性がまだまだ眠っています。当研究室では、新規材料の創成と素子の設計製作の両者から、これまでの常識を打ち破る革新的な電子素子の実現に挑みます。本研究室では、材料やそれから成る素子について総合的に知る必要があります。また実験装置を自らが動作させ、維持管理を行います。それらの経験は、電機メーカーを筆頭にインフラや研究機関などにおいて、幅広く活躍できる技術者になるために活きていきます。・2015年3月豊橋技術科学大学大学院工学研究科修了博士(工学)取得・同年4月より信州大学工学部助教専門の研究分野・結晶工学(結晶作り)、・電気・電子材料工学(材料探索と素子応用)左上:作製した層状物質の一例(電子顕微鏡像)。右上:結晶構造(原子配置)の概略。層状物質の多くは六角形の原子配置をしており、作製したもの(左上)もそれを反映した形状をしている。左下:断面構造の観察(電子顕微鏡像)。右下:積層構造の概略。特異な性質を⽰す材料の探索電気電⼦⼯学の新たな基盤技術を開拓電⼦情報システム⼯学科【私の学問へのきっかけ】中学生の頃に電化製品が作りたいと思い軽い気持ちで高専に進学しましたが、19歳の頃に実験で光る半導体に出会いました。原理や理屈は難しいですがそれが興味に変わり、深く知ってみたいと考え大学へ編入し、運よくその研室を続けてきました。現在では、半導体だけでなく理解が難しい現象を示す材料にも興味が移り、革新的な素子の開発を目指すようになりました。20

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