工学部_研究紹介_2020_日本語版
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助教戸田泰徳研究から広がる未来卒業後の未来像戸田研究室では、新しい分子の設計・開発を行っています。医薬品・農薬などの原料となる低分子から材料化学に利用される高分子まで、身の回りには有機化合物がありふれています。「分子レベル」でのものづくりにおいて有機合成化学はその根幹を成す極めて重要な研究領域です。現代の有機合成化学はものづくりのツールにまで成熟しましたが、この分野のさらなる発展には「常に新しい分子をつくり、その性質を理解する」ことが不可欠です。未知である分子のふるまいを理解する方法として触媒反応に着目し、新規触媒反応系の開発に取り組んでいます。「触媒」は化学反応を自在に制御し、欲しいものだけを「選択的に」得る方法を与えてくれます。選択的な反応の開発は有機合成化学者に課せられた使命であり将来の化学界を考えれば、学術界のみならず関連産業にも大きく寄与するものと考えています。有機合成化学はものづくりの基本的な技術を習得するため幅広い分野で活躍することができます。研究活動を通して化学系・製薬系の企業はだけではなく様々な分野において必要な能力を伸ばすことができるものと考えています。東北大学理学部化学科卒、東北大学大学院理学研究科化学専攻博士前期課程修了、同博士後期課程修了。理学博士。米国ヴァンダービルト大学博士研究員を経て2015年4月より現職。専門は有機合成化学、新規触媒反応の開発。新しい分⼦をつくり、触媒反応を通してその性質を理解する【私の学問へのきっかけ】化学は高校生の頃から漠然と好きでしたが、とりわけ有機化学に興味があったわけではありません。きっかけは、学部3年生の後期に有機系の研究室に配属されてからです。最先端の研究に触れ、先輩がひたむきに研究している姿に強く感銘を受けたのを覚えています。それからは有機化学を通したものづくりの世界に魅了され、自分なりに分子を設計し、何か新しい反応を開発できればと思うようになりました。現在は、研究の面白さと難しさを伝えていきたいと考えています。物質化学科何度も何度も反応を検討し条件を最適化していく。オイルバスを使い、反応の温度を一定に保っている分析装置(高速液体クロマトグラフィー)を用いて、反応の選択性を調べている助教鈴木清香研究から広がる未来卒業後の未来像鈴木研究室では、手嶋研究室・是津研究室・林研究室と共同して、光触媒材料の研究に取り組んでいます。燃料電池自動車が公道を走り、次世代エネルギーとして水素が注目を集めています。しかし、現在は化石燃料から水素が作られているため、真にクリーンなエネルギーと言えません。太陽光で水を分解して水素を製造できれば、地球にやさしい真のクリーンエネルギーになります。当研究室では、フラックス法を活用して、太陽光に応答する水分解用の光触媒結晶材料を探求しています。独自技術として、光触媒結晶の形状や配向を制御する研究にも挑戦しています。水分解による水素製造は実用化されていません。当研究室では、高品質な結晶材料が高い水分解性能を達成できると信じ、無機結晶のフラックス育成というコア技術を用いてソーラー水素製造に挑戦しています。フラックス結晶育成の知見を蓄積し、その応用の可能性を広げたいと思います。卒業研究では、どのような分野であっても、課題とその解決方法を考え、計画を立てて実験・評価し、次の研究計画を立てることが重要です。卒業研究を通して、課題解決に向けて考える力を養うことで、幅広い分野で活躍できると考えています。信州大学大学院総合工学系研究科修了、博士(工学)を取得。この間、日本学術振興会特別研究員DC2を兼任。2016年より現職。研究分野は材料科学、無機化学。フラックス法による無機結晶の育成~真のクリーンエネルギー創成を⽬指して~【私の学問へのきっかけ】漠然と環境問題の解決の一助となるような仕事に就きたいと思い、信州大学工学部環境機能工学科に入学しました。ある先生の言葉から材料を作る研究がしたいと思い、無機結晶育成の研究室を選びました。大学での恩師との出会いやさまざまな仕合わせ(幸せ、めぐり合わせ)のおかげで、環境調和型プロセスでエネルギー・環境材料を作る研究に携わることができています。物質化学科管状炉(左)でNH3ガスを流しながら加熱することで窒化物結晶(右)をフラックス育成フラックス育成したNaTaO3結晶。数百nmから数mmまでサイズを制御。配向制御も可能18

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