工学部_研究紹介_2020_日本語版
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助教佐伯大輔研究から広がる未来卒業後の未来像生体の基本単位である細胞は、その構造、機能がともに人工物には見られない特異な性質を有しています。細胞膜は脂質二分子膜からなり、細胞内外の環境を分け、恒常性を維持するとともに、優れた分子認識能による物質透過などを行っています。また、細胞内部では、DNAや酵素などの様々な生体分子が、高度な物質生産を行っています。さらに、細胞が集合体を形成し、より複雑な構造・機能を発現します。佐伯研究室では、奥村研究室とともに、これらの生体構造・機能を模倣した、新たな機能性材料の創製や、プロセス設計について研究しています。細胞膜の構造である脂質二分子膜や、分子認識、反応を司るタンパク質やDNAのような生体高分子を用いた、生体模倣的手法による構造設計は、ナノ・サブナノレベルでの構造・機能を精密に制御できる点から、マイクロリアクターや分離材料、センサーなど、様々な応用が期待されています。研究活動を通じて、既存技術の問題点や研究・開発の目標を理解し、解決手段を考え、実際に実行できる、一連のスキルを修得し、様々な分野において技術者・研究者として活躍していけるような教育を心がけています。特に、化学工学や界面化学、高分子化学に力を入れています。筑波大学大学院生命環境科学研究科修了、博士(生物工学)を取得。2009年日本学術振興会特別研究員(DC2)、2011年神戸大学特命助教を経て、2018年3月より現職。専門分野は生物化学工学、界面化学。⽣体の構造・機能を模倣した機能性材料の創製【私の学問へのきっかけ】高校では「化学」と「生物」が好きで、生命の仕組みを利用したモノづくりがしたいと考えていました。大学で、細胞膜を人工的に再現した「リポソーム」の研究を行っている恩師に出会い、ミクロな世界における「生体模倣」というアプローチに興味を抱きました。それ以来、細胞における物質生産を模倣したマイクロリアクターや、細胞膜の機能・構造を模倣した分離膜など、生体に学んだ機能性材料に関する研究を行っています。物質化学科生体構造の模倣による、様々な材料開発。マイクロリアクターや分離膜、センサーなどへの応用が期待される。カプセル内でのタンパク質合成生体膜中の分子を利用した、対象の物質を選択的に透過する分離膜。マイクロ流体デバイスを用いたファイバー(左図)、液滴(下図)形成。粒子やカプセルにも応用できる。助教清水雅裕研究から広がる未来卒業後の未来像自然エネルギーの有効活用には、発電した電気を貯蔵する蓄電池の存在が重要です。リチウム二次電池はその高いエネルギー密度から電気自動車用電源などの大規模デバイスなどにも適用されていますが、これらの需要増大にともないLiの資源問題もその深刻さを増してきています。当研究室では、Na,K,Mg,Znが正・負極間を移動する、Liに依存しない次世代蓄電デバイスの開発を行っています。これらのイオンを吸蔵-放出(充電-放電)する電極活物質の開発や、イオンを取り囲む溶媒分子を巧みに操り、電気化学反応をスムーズに進行させることに取り組んでいます。これらの研究を通して低炭素社会へ貢献します。自然エネルギーの有効活用にともない、大量の電気を貯蔵できる長寿命な蓄電池の開発が重要になってきます。希少金属を使用せず豊富に存在する資源を活用した次世代蓄電デバイスの創製は、エネルギーだけでなく資源問題への解決にも繋がるものと期待されます。材料の特性評価には様々な分析機器が必要となり、それらを扱った経験は、卒業後に大きなアドバンテージとなります。めっき技術や蓄電池開発を通して学問の習得だけでなく、機器分析のスキルを身につけ研究開発において活躍できる人材を育成します。2016年3月鳥取大学大学院工学研究科修了、博士(工学)取得。この間、同大GSC研究センター研究員(2013)、学術振興会特別研究員DC2(2014-2015)を兼任。専門は電気化学、溶液化学、材料化学。主に電気化学デバイスの創製に従事。低炭素社会実現に向けた次世代蓄電デバイスの開発【私の学問へのきっかけ】学部4年生のときに電気化学を扱う研究室に配属され、次世代リチウムイオン電池用の負極材料の開発に携わりました。化学反応は肉眼では到底見ることのできない極めて小さな世界で進行しており、虫眼鏡みたいなもので「分子やイオンの動きを見ることができたらな」といつも強く思います。さまざまな分析機器を駆使して現象解明を行うことができたときの喜びは今も忘れることはできません。現在も電気化学に基づきエレクトロニクス部品や蓄電池材料の開発などを行っています。物質化学科上図:電解質中の分子やイオンを上手に操って、Zn空気電池負極の金属析出反応を制御する添加する分子17

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